第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム 6 (II-S06)
Failed Fontanを救うための治療-Fontan術後管理・治療の道標となり得るか?-

2017年7月8日(土) 13:50 〜 15:35 第1会場 (1F 展示イベントホール Room 1)

座長:市川 肇(国立循環器病研究センター小児心臓血管外科)
座長:檜垣 高史(愛媛大学大学院医学系研究科 小児科学・地域小児・周産期学)

13:50 〜 15:35

[II-S06-04] Fontan Failure防止の工夫とFailure後の外科治療

佐野 俊二 (カリフォルニア大学サンフランシスコ校 小児心臓外科)

単心室症を含む複雑心奇形に対する機能的修復術である解剖学的右室バイパス術は1971年にFontanとKreutzerにより三尖弁閉鎖症に対する外科治療としてそれぞれ独立して報告された。当初の適応条件は非常に厳格なものであったが、手術術式の改良、段階的Fontan手術導入などによる成績向上により、適応は拡大され、今や肺血管抵抗と心機能のみがFontan手術の適応条件になっている感さえある。この適応拡大は多くの命を救ってきたが、遠隔期に不整脈、PLE,肝障害など多くの問題点を生み出している。
Fontan循環は慢性の高中心静脈圧と、低心拍出状態であり、それによって引き起こされる様々な合併症を予防するために多様な工夫がなされてきた。Fontan原法である心房・肺動脈連結法(APC法)による血栓栓塞症、不整脈は大静脈・肺動脈連結法(Lateral tunnel TCPC: TCPC-LT法、Extracardiac TCPC: TCPC-EC法)により著明に減少した。Fenestrated Fontanは術後急性期の静脈圧低下と心拍出量増大により、胸水貯留を減少させたが、長期開存は同時に低酸素血症という問題を提起した。
房室弁逆流残存や体心室流出路狭窄、肺動脈狭窄がFailing Fontanを生み出すことはよく知られており、これらの無いPerfect Fonatn手術を行う事が遠隔期のFailing Fontan防止の最大の方法である。またFailing Fontanに対する外科的治療法として、Fontan Conversion, Fenestrated Fontan、Lymphatic drainage、Transplantationなどが行われているが、Fontan Failureが起こった際は外科的修復可能な場合は可及的速やかに行う事が最良の治療法である。また我々は心機能低下症例に対し、2011年より心臓幹細胞移植術を用いた心機能改善を世界で最初に報告し、臨床応用している。近い将来、Failing Fontanのもう1つの問題点である肺血管抵抗(trans pulmonary gradient)低下が薬物治療、再生医療などにより実現される日も遠くないかもしれない。