第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム 7 (II-S07)
小児循環器集中治療の未来 ―小児循環器・心臓血管外科・麻酔集中治療とのコラボレーション―

2017年7月8日(土) 16:30 〜 18:00 第1会場 (1F 展示イベントホール Room 1)

座長:竹内 護(自治医科大学麻酔科学・集中治療医学)
座長:松井 彦郎(長野県立こども病院小児集中治療科)

16:30 〜 18:00

[II-S07-05] 小児循環器集中治療に関わる臨床工学技士の役割-体外循環技士としての周術期管理-

吉田 譲 (埼玉医科大学国際医療センター MEサービス部)

キーワード:限外濾過, MUF, 周術期

【はじめに】
循環器疾患の最たる治療である心臓外科手術における体外循環(CPB)は、術中だけでなく術後までおよぶ周術期の患者管理に大きな影響を及ぼしうる。特に小児CPBでは、体格の小ささにまつわる影響だけでなく、生体そのものの脆弱性や諸臓器機能の未熟さを意識して管理する必要がある。今回、小児CPBにおける水分バランス管理や炎症性メディエータ除去を目的として施行される限外濾過法(UF)について解説し、体外循環技士の視点から周術期管理を考える。
【限外濾過法】
1)充填血液洗浄濾過
充填に用いる保存血中の血管作動性物質除去や高カリウム補正のため、補液にて洗浄濾過を行う。
2)Conventional Ultrafiltration : CUF
CPB中に心筋保護液などの余分な水分による希釈を是正する目的で行う従来のUFで、希釈と同時に速やかに除水を開始する。
3)Dilutional Ultrafiltration : DUF
CPB中に血液を補液で置換しながら同時に除水するUFで、排液により水分や血管作動性物質を除去する目的に、CPBを通して適宜行う。
4)Modified Ultrafiltration : MUF
体外循環離脱直後、回路内残血や補液によって置換しながら短時間で急速に循環血液を洗浄濾過するUFの変法として、1990年代はじめ、Elliottらによって発表された。以降、小児CPBの標準的手技として、アクセスや置換液などの方法を施設ごとに工夫しながら広く実施されている。浮腫の軽減だけでなく、炎症反応物質の除去にも効果がある。
【まとめ】
小児は成人に比し、CPBの充填による希釈率が高いだけでなく、人工材料と血液との接触率が高く、それに惹起される炎症性反応も顕著となる。特に、血管透過性亢進で起こる浮腫の程度は、術後の回復にも大きく影響するため、術中のUF管理は重要である。また技士の集中治療室での役割のひとつに、CPB離脱困難例を含む小児重症心不全治療に対する循環補助法の管理がある。ECMOに加え、EXCORの適用によりその必要性は拡大している。