第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム 8 (II-S08)
小児循環器領域におけるiPS細胞研究の展望

2017年7月8日(土) 16:30 〜 18:00 第4会場 (1F 展示イベントホール Room 4)

座長:小垣 滋豊(大阪大学小児科)
座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学小児科)

16:30 〜 18:00

[II-S08-01] ヒト多能性幹細胞における代謝制御と心臓再生医療への応用

遠山 周吾1, 藤田 淳1, 菱木 貴子2, 末松 誠2, 福田 恵一1 (1.慶應義塾大学 医学部 循環器内科, 2.慶應義塾大学 医学部 医化学教室)

キーワード:iPS細胞, 心筋細胞, 再生医療

ヒト多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)は再生医療における魅力的な細胞源であるが、分化後に腫瘍化の原因となる未分化幹細胞が混入することが大きな問題になっている。そこで我々はこれまでにヒト多能性幹細胞の生存におけるグルコース代謝の役割に着目してきた。今回我々は、ヒト多能性幹細胞におけるアミノ酸代謝プロファイルを解析することにより、生存においてグルタミンがグルコースと協調して重要な役割を担っていることを明らかにした。ヒト多能性幹細胞をグルコースおよびグルタミンを除去した条件で培養した場合、グルコースのみを除去した場合に比べ、ATPが短時間で著明に低下し速やかに死滅した。またメタボローム解析により、ヒト多能性幹細胞はピルビン酸ではなくグルタミンを効率よく利用し、ATPを合成することを見出した。その要因としてヒト多能性幹細胞においてアコニターゼ2およびイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2/3の発現が著しく低いことが考えられた。一方、心筋細胞は同条件においても乳酸を添加することで生存可能であった。本研究成果により、FACSを用いることなく、安価かつ簡便に未分化幹細胞を除去した臨床水準の心筋細胞を作製することが可能となった。さらに我々は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞における大量培養系を確立し、現在臨床応用への準備を進めている。本シンポジウムでは、再生医療実現化に向けた我々の取り組みを紹介する。