第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム 9 (II-S09)
小児循環器領域の遠隔医療

2017年7月8日(土) 10:10 〜 11:40 第7会場 (2F 研修交流センター 音楽工房ホール)

座長:大月 審一(岡山大学医学部小児科)
座長:黒嵜 健一(国立循環器病研究センター小児循環器集中治療室)

10:20 〜 11:40

[II-S09-01] 新生児胎児の先天性心疾患遠隔診断

黒嵜 健一1, 三宅 啓1, 坂口 平馬2, 北野 正尚2, 吉松 淳3, 白石 公2 (1.国立循環器病研究センター 小児循環器集中治療室, 2.国立循環器病研究センター 小児循環器部, 3.国立循環器病研究センター 周産期科)

キーワード:遠隔診断, 心エコー, 胎児 新生児

【新生児心エコー遠隔診断】新生児の先天性心疾患は、血行動態の確実な診断、酸素投与やプロスタグランジン製剤使用、緊急手術など初期治療が生命を左右する。我々は2007年より、インターネット経由でリアルタイム転送された心エコー動画を遠隔診断し、初期治療勧告を行ってきた。初期システムの連続20例では、39±2週、2715±450gで出生した新生児を、日齢2±1で遠隔診断した。通信未確立の1例を除いた19例では、電話要請から遠隔診断開始まで約5分、画像表示から診断までは約10分であった。全例で先天性心疾患を認め、8例に緊急搬送を指示、内7例は動脈管依存でプロスタグランジン持続静注と酸素投与中止を勧告した。当科で確定診断できた18例では遠隔診断の血行動態把握は正確であった。【胎児心エコー遠隔診断】先天性心疾患の出生前診断は、胎児心エコーの発展により急速に普及拡大している。最近5年間の小児循環器科への新生児入院の55%(200例)は、胎児診断後の院内出生例であった。当院では臨床検査技師による胎児心エコー検査のリアルタイム動画像を別室の大画面に出力し、小児循環器専門医による擬似的リアルタイム遠隔診断を施行してきた。血行動態はほぼ正確に把握可能で、上記遠隔診断システムを利用すれば、胎児心エコー遠隔診断は直ちに臨床実用が可能である。ただし胎児の血行動態は比較的安定しており、スキャン動画像の保存伝達による遠隔診断も考慮すべきである。【法的問題】新生児リアルタイム遠隔診断は医師間の遠隔医療であり、送信側の医療行為への受診側からのアドバイスと解釈され、医師法20条には関連しない。胎児遠隔診断は治療方針や長期的予後の説明と同意が、患者医師間の遠隔医療となる可能性があり、慎重な対応が求められる。なお無償の遠隔診断でも誤診時は損害賠償請求の対象となり得るが、国内間の遠隔診断は医師責任賠償保険の範囲内と考えられる。