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[III-EOP09-02] AV-, VA-discordanceを合併した原発性線毛機能不全症の2例が示唆する、heterotaxyスペクトラムとしての大血管転位症の発症機序
Keywords:大血管転位症, 原発性線毛機能不全症, heterotaxy
【背景】心臓形態形成において左右非対称性が損なわれることが、多くの先天性心疾患の発症に中心的役割を果たすという理解が、拡がりつつある。しかし、房室、心室大血管関係の不一致による大血管転位症(TGA)もまた、その帰結の一病型と結論することには、未だ議論がある。一方、運動線毛の障害により全身臓器の左右位置異常を呈する疾患として、原発性線毛機能不全症(primary ciliary dyskinesia, PCD)が知られ、多彩な心臓表現型を伴う。AV-, VA-discordanceを合併したPCD症例を経験し、TGAの発症機序を考える上で示唆に富む症例と考えられたので、報告する。
【症例1】出生後チアノーゼを認め、心臓超音波検査によりsitus inversus, AV discordance, pulmonary atresia, VSD, ASD, PDAと診断された。2歳時にanatomical repairを施行され、現在6歳となり、肺動脈性肺高血圧症を合併し、肺血管拡張薬を服用している。乳児期早期より中耳炎・副鼻腔炎・気管支炎といった慢性気道感染症に悩まされた。全エクソン解析の結果、線毛構成因子のDNAH5遺伝子に複合ヘテロ変異が同定され、PCDの確定診断に至った。【症例2】出生後チアノーゼを認め、心臓超音波検査によりsitus inversus, TGA(III), ASD, PDAと診断された。1歳7か月時にYamagishi手術が行われ、現在8歳となり、外来にて遺残右肺動脈狭窄の経過観察中である。新生児期から下気道感染症を反復し、喀痰、無気肺の管理に難渋した。全エクソン解析の結果、線毛構成因子のDNAAF1遺伝子に複合ヘテロ変異が同定され、PCDの確定診断に至った。
【考察】上記2症例から得られる知見は、房室、心室大血管関係の不一致によるTGAを、heterotaxyスペクトラムに含める考え方を支持する。心臓発生過程における左右非対称性維持機構の破綻が、TGAの本態である可能性が示唆された。
【症例1】出生後チアノーゼを認め、心臓超音波検査によりsitus inversus, AV discordance, pulmonary atresia, VSD, ASD, PDAと診断された。2歳時にanatomical repairを施行され、現在6歳となり、肺動脈性肺高血圧症を合併し、肺血管拡張薬を服用している。乳児期早期より中耳炎・副鼻腔炎・気管支炎といった慢性気道感染症に悩まされた。全エクソン解析の結果、線毛構成因子のDNAH5遺伝子に複合ヘテロ変異が同定され、PCDの確定診断に至った。【症例2】出生後チアノーゼを認め、心臓超音波検査によりsitus inversus, TGA(III), ASD, PDAと診断された。1歳7か月時にYamagishi手術が行われ、現在8歳となり、外来にて遺残右肺動脈狭窄の経過観察中である。新生児期から下気道感染症を反復し、喀痰、無気肺の管理に難渋した。全エクソン解析の結果、線毛構成因子のDNAAF1遺伝子に複合ヘテロ変異が同定され、PCDの確定診断に至った。
【考察】上記2症例から得られる知見は、房室、心室大血管関係の不一致によるTGAを、heterotaxyスペクトラムに含める考え方を支持する。心臓発生過程における左右非対称性維持機構の破綻が、TGAの本態である可能性が示唆された。