第53回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム 13 (III-S13)
次世代の育成

2017年7月9日(日) 08:30 〜 10:00 第4会場 (1F 展示イベントホール Room 4)

座長:角 秀秋(福岡市立こども病院 心臓血管外科)
座長:安河内 聰(長野県立こども病院循環器小児科)

08:30 〜 10:00

[III-S13-02] 心臓外科若手医師は「フルーツ売りの若者」と同じではないか?

櫻井 寛久 (中京病院)

キーワード:心臓外科, トレーニング, 集約化

多くの施設で若手心臓外科医が足らないということが言われる一方で、多くの若手外科医は手術をさせてもらえないという。心臓外科医が足らない一方で、心臓外科医の一番の仕事である手術の仕事量は十分でないという矛盾。心臓手術をする医者が足らないわけでなく、心臓外科術後を見る医師の不足や、心臓外科に関わる雑用をこなす人材が不足していることが真実でないかと思われる。日本の心臓外科医のビジネスモデルは、少数の執刀機会を若手への励みとして、若手医師を勧誘し、若手医師に手術以外の術後管理等心臓外科関連の仕事を負担することにより、心臓外科が成り立っている。これは近年、街での見かけることもある「夢」と引き換えに若者の労働を搾取するやりがい搾取と言われる「フルーツ売りの若者」と本質的に何が違うのだろうか? 現在、次世代の育成ということに最も欠けていることは、次世代に対する機会の提供、若い時期に相当数の執刀をする機会が欠けていることが問題ではなかろうか。現在top surgeonと言われている外科医は30代もしくは40代前半から相当数の手術執刀を行っている。次世代の外科医で同じように30代もしくは40代前半で十分な執刀の機会がある外科医はほとんど国内においては見当たらないように思われる。Technologyの進歩によりdryラボやvirtual simulationといった手段で多少の解決は期待できるが、持続可能な次世代の育成を行うには適切な施設の集約化、他職種との適切な仕事の分担なくしては適切な執刀数を若手提供することは極めて難しいのではなかろうか。欧米ではもちろんの事、アジアの国々においての施設の集約化は行われている。心臓外科医個人に頼った育成の仕組みでなく、大きな枠組みで他職種との仕事の分担、施設の集約化が欠かせないと思われる。個人の努力に頼るのではなくシステムとしての改変が必要である。学会としてもできることはないのだろうか。