[I-MOR05-01] 術後乳び胸水をきたす症例のリスク因子の検討
Keywords:乳び胸水, 中心静脈圧, トリグリセリド
【背景】乳び胸水は、脂肪制限や絶飲食で改善しない症例には胸膜癒着療法や胸管結紮術などが行われる。しかし、侵襲的な治療であり、術後の全身状態によっては行えないこともある。難治性症例のリスク因子を把握することで、より早期に治療介入し症状改善につながる可能性がある。【方法】2015年1月から2017年12月までに当院で手術を行い、術後乳び胸水と診断された22例について診療録を後方視的に検討した。乳び胸水の診断は、胸水中のトリグリセリド110mg/dl以上、または、胸水中の細胞数が1000/μL以上・単核球優位のいずれかを満たすものとした。【結果】該当症例は22例で、男児11例、女児11例。手術時の年齢は0ヶ月から2歳(平均7ヶ月)だった。乳び胸水と診断した術後日数は術後2日から60日(平均13.7日)であった。治療として、MCTミルクや脂肪制限食への変更、絶飲食、オクトレオチド、プレドニン、胸膜癒着療法、胸管結紮、リンパ管静脈吻合を行っていた。MCTミルク・脂肪制限食への変更や絶飲食で胸水が減少した9例(軽症群)とそれ以外の13例(重症群)では、診断された術後病日には差はなかったが、重症群ではトリグリセリドが高値の傾向があった。また、重症群では上大静脈や下大静脈の閉塞している症例が4例あったのに対して、軽症群では認めなかった。静脈系が狭窄・閉塞していた4例のうち2例が死亡症例であり、残りの2例も症状改善までに14日以上かかっていた。軽症群では、診断から症状改善までの日数は4日から7日であった。トリグリセリド110mg/dl以上と110mg/dl未満で比較した場合、診断から症状改善までの日数には差は見られなかった。【考察】重症度によって静脈系の狭窄・閉塞の有無に差が見られたことから、静脈系の狭窄・閉塞によりリンパ還流を阻害し乳びの漏出が起こりやすいことが考えられる。しかし、トリグリセリドの値は難治性症例のリスク因子とは言えない。