[I-OR01-04] 僧帽弁輪部拡張早期運動の加速度(e’Ac: Acceleration of e’ wave)と持続時間(e’ dur: e’ wave duration)は左室Elastic recoil/stiffnessの評価に有用である。
Keywords:減衰振動, Elastic recoil, 拡張能
【背景】僧帽弁輪拡張早期波形 (e'波)は筋原線維収縮の不活化に伴う弛緩を反映し、時定数(τ)と負の相関を示すと報告されている。しかし、拡張早期弛緩は筋原線維の不活化のみでなくElastic recoil/Stiffnessも含んで形成される。我々は心室圧を心筋細胞の伸縮に起因するElastic recoil/StiffnessとCross-bridgingによる心筋収縮を惹起する力とのバランスで形成されていると捉えて、心室圧波形 P(t)を減衰振動の運動方程式 d2P/dt2 + 1/μ dP/dt + Ek (P - P∞) = 0 (1/μ:減衰係数; Ek:ばね定数; P∞: asymptote)に適用し、Ek(Elastic recoilおよびwall stiffness)、 1/μ(cross-bridging関連のrelaxation)を求めた。組織ドプラから得られる e'波形態も Ek, 1/μの影響を受けていると考えられる。カテーテル検査による圧測定を必要とせず、組織ドプラ法を用いた非侵襲的な方法でこれらの評価ができれば有用性が高いと考えた。【目的】減衰振動の運動方程式から算出されるEk (s-2), μ(ms)が、組織ドプラを用いて評価可能であるかを検討する。【方法】小児心疾患症例25例を対象とした。左室等容性拡張期の圧波形を上記運動方程式にfittingさせるためにLevenberg-Marquardt法を用いて、Ek, μを計測し、組織ドプラから得られたe’波のProfileと比較した。 【結果】Ek は777.9±123.1 s-2, μは24.8±9.3 msであった。e’波の加速度(e’Ac)は187.0±30.6cm/s2であり、Ekと有意な正の相関を示した (r=0.61, p<0.05)。e’波の持続時間 (e’dur)は 111.7±17.7msでEkとは負の相関を示した(r=-0.47, p<0.05)。e’波の最高速度、減速度とは相関は無かった。μに関してはこれらのe’波指標と有意な相関を示すものは認められなかった。【結語】e'波の加速度(e’Ac)と持続時間(e’ dur)はElastic recoil/stiffnessを反映した。e'波は筋原線維不活化よりもElastic recoil/stiffnessを強く反映する。