第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

外科治療

一般口演04(I-OR04)
外科治療 2

2018年7月5日(木) 16:50 〜 17:40 第3会場 (302)

座長:市川 肇(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
座長:平松 祐司(筑波大学医学医療系 心臓血管外科)

[I-OR04-05] 気管狭窄を合併した先天性心疾患に対する治療戦略:一期的同時修復か、段階的アプローチか

日隈 智憲, 村上 優, 岩城 隆馬, 松久 弘典, 大嶋 義博 (兵庫県立こども病院 心臓血管外科)

キーワード:気管狭窄, 先天性心疾患, 手術戦略

【背景】気管狭窄(TS)合併先天性心疾患(CHD)症例に対する一期的同時修復は、呼吸・循環動態の安定という点で理想ではあるが、手術侵襲が大きいため、複雑心奇形や乳児早期例での同時手術には議論の余地がある。【目的】これまで当院では、人工物を要する姑息手術や長時間体外循環症例、複雑な気管形成を要する症例に対し、段階的アプローチ、それ以外は同時修復といった方針で治療を行ってきた。2006年以降の当院におけるTS合併CHDで、同時修復を行った20例と心臓手術を先行させた8例を比較し、治療戦略の妥当性について検討する。【対象】同時手術群(C群)のCHDはVSD 8、TOF 3、ASD 3、DORV 2、AVSD、AP window、CoA complex、SV & TAPVC(asplenia)が各1例、段階的手術群(S群)はPA/VSD 2、VSD、AVSD、TA(Ib)、TAPVC、Truncus、DORVが各1例。PA sling合併例がC群に6例、S群に2例含まれる。追跡期間は中央値でC群50ヵ月(8~138)、S群 59ヵ月(11~137)。【結果】C群は手術死亡1例、在院死亡1例に対し、S群は手術死亡、在院死亡共になし。死因は前者が気管形成部の縫合不全からの縦郭炎、後者が、換気・循環不全でECMO装着、離脱困難から多臓器不全への移行であった。以降C群:S群で表記する。心臓手術時月齢はで7.5ヵ月(2.2~23.9):4.5ヵ月(0.4~30)、体重は5.3±1.7kg:5.6±1.9kgで有意差なし。S群は気管のバルーン拡大を2例に先行させたが、手術介入は心臓を先行させている。手術時間 495±116分:474±208分、体外循環時間 307±89分:300±150分、大動脈遮断時間65±35分:92±47分といずれも有意差は認めない。しかし、気管形成時の体外循環時間と比較すると307±89分:266±53分;(p=0.02)と有意にC群で長かった。【結語】C群の死亡例はそれぞれ体重 3.2、4.1kg、体外循環時間 403、551分と乳児早期の長時間体外循環症例であった。乳児早期例の長時間外循環を要する複雑CHDは段階的アプローチが妥当であると考える。