[I-OR05-01] Del Nido液による単回血液心筋保護効果に関する臨床応用に向けた実験的検討
Keywords:デルニド, 心筋保護, 単回投与
【背景】米国では小児心臓外科領域において単回投与のみで心筋保護効果を有するとされるDel Nido液が普及しているが機能回復率に関する基礎研究データが欠如しており、適用の条件はいまだ未確立である。【目的】今回我々はDel Nido液による局所冷却の是非,虚血耐用時間を評価することを目的とした大動物による実験を行った。【方法】対象は生後2か月のpiglet, 24頭。In vivoのCPB modelにてDel Nido液投与後90分虚血群,90分(非局所冷却)虚血群,120分虚血群,及びCPBのみのcontrol群の左心機能をコンダクタンスカテーテルを用いて計測した.また,心筋障害の評価としてCK-MB, ミトコンドリアスコア, mRNAを測定した。【結果】Control群では心機能の低下はほとんど認められなかった(Ees 122.±36.29%, EDPVR 103.8±37.2%).90分虚血群では収縮能、拡張能とも充分満足いく回復率 (Ees86.6±20.4%, EDPVR 93.±41.87%)であり、90分虚血(非局所冷却)群では拡張能の低下(Ees 80.2±14.7%, EDPVR 69.5±34.2%)を認めた.120分虚血群では収縮能の低下(Ees 56.±19.22%, EDPVR 91.±24.91%)を認めた。CK-MBはcontrol群で24.0±10.1ng/ml, 90分虚血群で36.1±22.5ng/ml, 90分(非局所冷却)群で46.1±24.76ng/ml, 120分遮断群で47.8±25.7ng/mlであった.ミトコンドリアスコアはcontrol群,90分虚血群,非局所冷却群,120分虚血群でそれぞれ,0.17±0.05, 0.35±0.04, 0.33±0.03, 0.48±0.27でTNFaは1.5±1.5, 1.2±1.0, 4.2±2.1, 1.6±1.5であった。【結論】90分虚血群では単回投与のみで心筋保護効果を有すると考えられた.ただし,心停止中の局所冷却が拡張能の温存に重要であることが示唆された.また,120分虚血では収縮能の低下を認め,追加投与などの処置が必要と考えられる.生化学データ, mRNAの観点からは非局所冷却や120分以上の心筋虚血が心機能障害を惹起すると考えられた。