[I-OR05-02] 人工心肺中好中球/リンパ球比は小児開心術後急性腎傷害の予測因子となりうるか?
キーワード:好中球, 急性腎障害, 人工心肺
【背景、目的】小児開心術の人工心肺関連急性腎傷害(CPB-AKI)は、術後急性期の重篤な合併症であり、その早期予測が重要であると考えられる。一方、好中球・リンパ球比(Neutrophil/Lymphocyte ratio:NLR)は、炎症やストレス応答の指標であることが知られている。今回、NLRがCBP-AKIの予測因子となりうるかを検討した。【対象、方法】 対象は、21-Trysomyを除く心室中隔欠損症連続63例。月齢は4.2±2.7(ヶ月)、CPB時間100.9±38.2(分)であった。AKI判定に、p-RIFLE分類を用いた。術後AKI発症とNLRを含むCPB因子との関連について調べた。【結果】eGFRは、術前106.8.9±24.9、術後24時間94.5±30.7 (mL/min/1.73m2)であり、AKI発症率は14例(22.2%)であった。術前NLRは0.43±0.37、CPB中 NLRは1.24±0.68であった。eGFR低下との単変量解析ではCPB時間(r=-0.31,P=0.01)、術直後乳酸値(r=-0.33,P=0.007)、術直後LDH値(r=-0.26,P=0.03)、CPB中 NLR(r=-0.42,P<0.001)に有意な相関がみられ、手術時月齢や体重、術前Qp/Qs、術前肺血管抵抗、術直後PF ratioには相関はみられなかった。重回帰分析では、術直後乳酸値(CO:-0.97,95%CI:-1.90 - -0.05,P=0.04)、CPB中 NLR(CO:-0.1,95%CI:-0.18 - -0.01,P=0.03)が独立危険因子であった。また、ROC解析における術後24時間にAKI発症となるCPB中NLRのカットオフ値は1.49 (AUC=0.84,P<0.001)であった。【考察】 CPB-AKIは、炎症や虚血再灌流・微小循環障害が発症に至る主要要因であるとされている。今回の結果よりNLRは、CPB中の炎症や組織障害に対する不十分なストレスコントロールを反映していると考えられる。CPB中NLRの上昇は、術直後の乳酸値の上昇とともに、AKIリスク患者を検出できる予測因子であることが示された。【結論】日常臨床の範囲内で容易に算出できるNLRは、小児開心術におけるCPB-AKIのリスクを早期に予測できる簡便かつ有効な指標である。