第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

電気生理学・不整脈

一般口演06(I-OR06)
電気生理学・不整脈 1

2018年7月5日(木) 09:50 〜 10:40 第4会場 (303)

座長:坂口 平馬(国立循環器病研究センター 小児循環器科)
座長:鈴木 博(新潟大学医歯学総合病院 魚沼地域医療教育センター・魚沼基幹病院 小児科)

[I-OR06-01] 先天性QT延長症候群の診断におけるT波形態解析の有用性

堀米 仁志1, 石川 康宏2, 林 立申1, 野崎 良寛1, 石川 伸行1, 加藤 愛章1, 高橋 実穂1, 岩本 眞理3, 住友 直方4, 吉永 正夫5, 堀江 稔6 (1.筑波大学 医学医療系 小児科, 2.石川クリニック, 3.済生会横浜市東部病院 小児科, 4.埼玉医科大学 国際医療センター 小児心臓科, 5.鹿児島医療センター 小児科, 6.滋賀医科大学 呼吸循環器内科)

キーワード:先天性QT延長症候群, T波形態, 多変量解析

【背景】遺伝子検査で病的変異が検出された先天性QT延長症候群(LQTS)でも約20~40%はQTcが軽度延長または正常範囲内に留まり、自律神経や環境因子による変動もあるため、LQTSの診断に迷うことがある。LQTSのもう一つのECGの特徴にT波の形態異常があり、境界域QTc例の診断や遺伝子型の鑑別診断における有用性が注目されている。【目的】高精度心電図データをもとに、主成分分析法(PCA)と独立成分分析法(ICA)を用いてLQTS患者のT波形態を解析し、LQTS診断における有用性を検討した。【対象】遺伝子検査で病的変異があったLQTS患者41例を対象とした。遺伝子型はLQT1:22例、LQT2:7例、LQT3:12例であった。心疾患のない健常者12例(QTc )を対照とした。心電信号は生体アンプ(TEAC社製)とアクティブ電極を用いて2000Hzで10チャネルの時系列データとして収集した。T波形態の指標として用いたのは、PCAによる第2主成分/第1主成分比(PCA-ratio=PCA2/PCA1)およびICAによる独立成分(IC)の数とした。【結果】QTc(s)は健常群0.40±0.03、LQT1 0.51±0.05、LQT2 0.53±0.05、LQT3 0.49±0.03。PCA-ratio (%)は健常群11.85±7.18、LQT1 31.64±21.3、LQT2 41.3±15.16、LQT3 35.89±22.13で、LQTSでは健常群より高値(p<0.001)で、特にLQT2で高い傾向を示した。T波を構成するIC数は健常群で全例4個であったのに対して、LQTSではいずれも5~7個であった。PCA-ratioはQTcと有意な相関がなかったが(r=0.42)、IC数と有意に相関し(r=0.62)、両指標が再分極過程の不均一性を表わすことを示唆した。境界域QTcを示すLQTS例でもIC数は5個以上であった。LQTSの症状(失神・心室頻拍)の有無による比較は有症状例の数が少なく、検定できなかった。【まとめ】T波形態の指標はLQTS診断に有用であるが、どの指標が最も感度、特異度に優れ、リスク階層化に有用であるかはさらに多数例での検討を要する。