第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

電気生理学・不整脈

一般口演06(I-OR06)
電気生理学・不整脈 1

2018年7月5日(木) 09:50 〜 10:40 第4会場 (303)

座長:坂口 平馬(国立循環器病研究センター 小児循環器科)
座長:鈴木 博(新潟大学医歯学総合病院 魚沼地域医療教育センター・魚沼基幹病院 小児科)

[I-OR06-03] 異所性心房頻拍に対する薬物療法に関する検討

住友 直文, 高砂 聡志, 宮田 功一, 福島 直哉, 永峯 宏樹, 大木 寛生, 三浦 大, 澁谷 和彦 (東京都立小児総合医療センター循環器科)

キーワード:心房頻拍, 抗不整脈薬, 先天性心疾患

【背景】
異所性心房頻拍(EAT)は小児に多く見られるが,薬物療法に関するエビデンスが乏しく,薬剤選択にしばしば難渋する.
【目的・方法】
小児EATに対する薬物療法の有効性と安全性を明らかにするため,2011年3月~2017年12月に当院で診療したEATのデータを後方視的に収集し,基礎心疾患合併あり(HD)群となし(N)群に区別して検討した.
【結果】
1)対象:全患者36例のうち,HD群20例,N群16例であった.初発年齢中央値 0.1歳 (0.0~29.1歳),男児 25例 (69.4%),観察期間中央値 3.4年でHD群とN群に差は見られず, 染色体異常・奇形症候群は10例 (27.7%,すべてHD群)でHD群が有意に多かった(p = 0.001).
2)治療効果:計42回の頻拍発作に対し63回の投薬 (静注24回, 内服39回)が行われ, 頻拍停止率はフレカイニド(FLEC) 84.2% (16/19例), β遮断薬(BB) 53.1% (17/32例), アミオダロン(AMD) 50.0% (3/6例), ジゴキシン(D) 0.0% (0/6例)で,FLECが他剤に比べ有意に高かった(p = 0.003).FLECの頻拍停止率はHD群 100.0% (11/11例), N群 62.5% (5/8例)で, HD群が有意に高かった(p = 0.02).
3)転帰:再発率は27.7% (10/36例)で,初回頻拍~再発の期間は中央値 0.1年 (0.0~2.7年)であった.予防薬別の再発率は(重複を含め)FLEC 41.7%(5/12例), BB 21.4%(6/28例), AMD 0.0%(0/6例), D 66.7%(4/6例)で, Dが他剤に比べ有意に高かった(p = 0.04). HD群の再発率は45.0% (9/20例)で, N群 6.2% (1/16例)と比べ有意に高かった(p = 0.01).服薬中止率はHD群 30.0% (6/20例), N群 62.5% (10/16例)で,N群が有意に高かった(p = 0.017). アブレーションは3例 に行われ, 2例で根治, 1例で再発を認めた.
4)重篤な副作用:FLEC中毒による心室頻拍を5.8%(1/17例), BBによる低血糖発作を3.1%(1/32例)に認めた.
【考察】
FLECはEATを高率に停止でき,HD群で特に効果が高かった. N群の予後は良好だが, HD群では再発に注意が必要と考えられた.