[I-OR06-05] WPW症候群の管理における薬物負荷試験の有用性
キーワード:副伝導路症候群, ATP, Amisalin
【背景・目的】WPW症候群(副伝導路症候群)は不応期が短い場合、心房細動などの合併により偽性心室頻拍から心室細動・心停止に至る場合がある。我々は心房細動・粗動から心室頻拍に至った房室副伝導路の2症例(1例は心肺停止蘇生例)を経験した。外来診療で行っている副伝導路症候群の管理について検討した。【対象・方法】WPW症候群と診断され、外来でATP負荷・Amisalin負荷試験を施行した204例を対象とした。負荷試験は、全例ホルター心電図を装着し行っている。ATP負荷は、肘静脈より0.2mg/kgの急速静注を行い、房室ブロックかδ波(QRS)の変化が認められなければ、0.3→0.4→0.5mg/kgで増量していく。ATP負荷試験でδ波の変化が認められ、房室副伝導路と診断された場合はAmisalin負荷試験を行っている。Amisalinは10mg/kgを3分間で静注し、δ波の消失の有無を、静注開始から10分間観察している。【結果】ATPで房室ブロックを認め束枝心室副伝導路と診断されたの97名、δ波の変化を認め房室副伝導路と診断されたのは66名、その他は41名であった。Amisalin負荷は79名に行い、δ波が消失した(不応期が長い可能性がある)のは45名、δ派が残存(不応期が短い可能性がある)したのは33名であった。【考案】副伝導路症候群に対するATP負荷試験は、束枝心室副伝導路と房室副伝導路を鑑別できる。97名(48%)は束枝心室副伝導路と診断され定期検診が不要となり、不要な心配・外来受診をなくすことができ有用であった。一方Amisalin負荷試験でδ波が消失する場合、不応期は270msecよりも短い可能性があるとされる。対象204名中、不応期が短い房室副伝導路の可能性が示唆されたのは33名(16%)であった。心房細動などを合併した場合、これらの患児は偽性心室頻拍から心室細動・心停止に至る可能性があり、本人・家族へ十分な説明と、予防的焼灼術の可能性などを今後検討していきたい。