[I-OR10-03] 乳児期発症拡張型心筋症の心不全発症月例と重症度
Keywords:拡張型心筋症, 発症月例, 心臓移植
背景:乳児期発症の拡張型心筋症(DCM)では、早期に著明な肺うっ血を呈し補助循環を必要としてしまう超重症例が経験される一方で、内科的な急性・慢性期心不全治療により良好な経過をたどる症例も少なくない。しかし、両者を症状や検査所見で予測をすることは難しい。Berlin Heart時代において、重症度の予測は治療戦略決定において非常に重要である。目的:乳児期発症のDCM管理において重症例を急性期管理の中で予測できる臨床指標を明らかにし、小児心臓移植施設との速やかな連携を実現することを目的とする。対象および方法:対象は当センターで2006年から2017年に心不全管理を行った2歳未満発症のDCM 31例。補助人工心臓装着、もしくは死亡した症例を重症例とした。その重症例を予測する因子として、性別・発症月例・発症時の心臓超音波検査指標・発症時BNP値などで検討を行った。結果:平均観察期間58±36ヶ月で10例が重症例(心不全死もしくは補助人工心臓装着)となった。男児が13/31(42%)、重症例の割合に性差は認めなかった。発症月例は中央値3.0(0-16)ヶ月で、重症例はすべて発症月例4ヶ月以内であり、1ヶ月以内の発症例では8例中6例(75%)が重症例であった。発症時のBNP値、心臓超音波検査での収縮能指標では予測はできなかった。考察: 31例中21例(68%)で発症月例が4ヶ月以内であった。そして発症月例が2ヶ月未満の場合には高率に重症例であったことを考えると、重症例では出生後の左室への前負荷と後負荷増大そのものに耐えきれず早期に発症してしまう。生後の循環の変化に耐えられたとしても、その後の哺乳という容量負荷増大に対して代償しきれなくなった群が生後4ヶ月あたりで発症すると予想される。後者の場合は、急性期に十分に容量負荷軽減を図ることで良好な経過をたどる可能性がある。結語:発症月例が2ヶ月未満のDCMでは早期の心臓移植施設との連携が重要である。