[I-OR10-04] 心臓移植の適応を検討した先天性心疾患術後重症心不全の6例
キーワード:心臓移植, 先天性心疾患, 重症心不全
背景近年、先天性心疾患(CHD)術後の生命予後が向上した一方、遠隔期に重症心不全に陥り心臓移植適応検討を要する例が増加している。これらの症例では、複雑な血行動態や他臓器の合併症のため適応評価は困難を極めることが多い。目的CHD術後重症心不全に対する心臓移植適応の問題点を明らかにすること。対象と方法院内心臓移植適応検討委員会で適応評価を行ったCHD術後症例6例を対象とし、後方視的に適応評価項目を検討し文献的考察を加えた。結果6症例の手術歴は、姑息術後1例、Glenn術後2例、Fontan術後1例、2心室修復後2例、移植適応検討時年齢は中央値7.5歳(6ヵ月~31歳)であった。心臓移植の適応と判定され登録待機に至ったのはGlenn術後1例だけであった。成人期の2例(Glenn術後1例、Fontan術後1例)は、肺高血圧・側副血行路と呼吸機能障害のため心肺同時移植の必要性が高く、かつ他臓器障害も併存していたため耐術能や予後の点から総合的に適応外と判断された。2心室修復後の2例は不可逆性脳神経障害や肝障害の合併が明らかになり絶対的適応除外条件から適応外と判断された。また姑息術後症例は適応と判断されたが家族が移植を希望しなかった。社会的背景から適応外と判断した例はなかった。考察CHD術後に対する心臓移植の予後は、2心室修復例ではnon-CHDの移植後成績とほぼ同等であるが、Glenn術やFontan術後例ではVAD装着や心臓移植の予後は必ずしも良くないと報告されている。CHD術後例では、肺・肝臓・腎臓など重要臓器の合併症が多く、胸部手術歴・輸血歴・複雑な解剖など、複数の相対的適応除外条件が存在することが問題である。CHD術後例の移植適応検討は個別に多角的に行う必要がある一方、症例蓄積によるフィードバックが望まれる。