[I-OR11-01] Fallot四徴症修復手術後の成人の大動脈基部拡大と弾性低下 に関する前向きコホート研究(TRANSIT)
キーワード:ファロー四徴症, aortopathy, 大動脈基部径
[ 背景・目的] Fallot 四徴( TOF )修復手術後の成人では,約 15% に大動脈壁の弾性低下による大動脈基部拡大( AD )が合併するといわれている。 AD は,左室機能低下,大動脈弁閉鎖不全,さらに大動脈解離もともなう aortopathy であるが,日本での実態や有効な薬剤は明らかでない。そこで,日本人を対象にTOF (肺動脈閉鎖PA/VSDを含む)の診断で修復手術を行った 20 歳以上の成人を対象とした多施設共同前向きコホート研究(TRANSIT )を計画した.今回、データを解析し得た初回登録時の57症例ついて報告する。 [ 方法 ] 初回検査時の心臓超音波検査の画像(CDで収集)を中央解析で評価し、バルサルバ洞径 (Val)を評価した。更にADを過去の報告同様にVal 40mm以上と定義し、大動脈基部拡大あり群(AD群)と拡大なし群(NL群)とのリスク因子の検討を行った。 [ 結果 ] 対象は57症例で、年齢20歳 6か月から53歳5か月(平均33歳6か月)、男性34例(60%)、体重 62.2 ± 12.9kg、体表面積 1.67±0.19(m2)、染色体異常8例、右大動脈弓6例、PA/VSD 5 例。 Val計測値 (% of Normal) は 34.6 ± 5.32mm(150 ± 15% of N) 。AD群は10例(18%)であった。ADリスク因子として考えられた、男性、大動脈肺動脈シャント既往、PA/VSD、右大動脈弓、染色体異常について検討したが、AD群とNL群では意差はみられなかった。また大動脈弁形成術や置換術の施行例はなかった。 [ 考察 ] 日本人のTOF 術後成人例において18%にADが見られ、海外の報告と同様であったが、初回検査時の結果からは有意なリスク因子は指摘できなかった。本研究では3年後に心臓超音波検査を行うことにより、大動脈基部径の拡大率とリスク因子を明らかにする予定である。