[I-OR11-03] Fontan術後と腎機能障害に関する研究
キーワード:Fontan術後, 腎機能障害, 蛋白尿
【背景】Fontan術後患者では、静脈圧上昇や心拍出量低下による腎血流減少、チアノーゼ腎症など腎機能障害に関する因子が存在するが、遠隔期腎機能障害の報告は少ない。【目的】Fontan術後患者の腎機能障害の頻度とリスク因子を明らかにすること。【方法】2009年~2017年の8年間に当院ACHD外来を受診した18歳以上のFontan術後患者161名(23.4±5.4歳、術後16.9±3.4年、TCPC(EC)110名、TCPC(LT)45名、APC 6名)において、クレアチニン(cre)とシスタチンC(cysC)それぞれよりeGFRを算出し、eGFR正常群(>90 ml/min/1.73m)、低下群(<90 ml/min/1.73m)にわけ、各パラメータ(IVC圧、術式、Cardiac index(CI)、SpO2、肝線維化マーカーなど)との関係を、蛋白尿の有無と各パラメータとの関係を検討した。また、eGFRと蛋白尿有無についてロジスティック回帰分析を行った。【結果】cre=0.69±0.14mg/d、cysC=0.67±0.14mg/L、eGFR(cre)=106.4±20.3mL/min/1.73m2 、eGFR(cysC)=128.3±23.1mL/min/1.73m2 と基準内であった。29名(18.4%)の患者がeGFR<90ml/min/1.73m2と腎機能低下を認めた。16名(13.3%)で蛋白尿を認め、4名(3.3%)は尿定性>2+の高度蛋白尿であった。eGFR正常群と低下群の比較では、術式(p=0.0091)、CI(p=0.011)と、eGFR低下群ではAPCが多く、CI低値であった。高度蛋白尿群と蛋白尿なし群の比較では、IVC圧(p=0.0003)、SpO2(p=0.0015)、ヒアルロン酸(p<0.0001)、4型コラーゲン7S(p=0.0005)と、高度蛋白尿群でIVC圧高値、SpO2低下、肝線維化マーカー高値を認めた。ロジスティック回帰分析では、eGFRでCI(Odds比3.63・95%信頼区間1.56-9.95・p=0.0016)が、蛋白尿有無で腎還流圧に関与する平均血圧-IVC圧(Odds比0.88・95%信頼区間0.78-0.97・p=0.021)がリスク因子である可能性が示唆された。【結語】心拍出量低下や腎還流圧低下がある患者では腎機能障害を念頭にいれ、慎重なフォローが必要である。