[I-OR12-01] ファロー四徴症術後患者における上行大動脈のdistensibilityが循環動態に与える影響
キーワード:ファロー四徴症, distensibility, 大動脈拡張
【背景】健常成人では上行大動脈のdistensibility (AAD)低下は、死亡や心血管イベント発生の予測因子となるが、そのメカニズムやAAD低下が後負荷となり左室へ及ぼす影響は明らかになっていない。【目的】大動脈拡張を伴うことが多いファロー四徴症(ToF)患者においてAAD低下の有無と心血管機能の関係を検討する。【方法】対象は当科外来で診療中のToF心内修復術後患者のうち、2014年1月からの4年間に心臓MRIを撮影した患者。AADを(上行大動脈断面積の最大値-最小値)/断面積最小値/脈圧で算出し、循環動態指標との相関関係を検討する。【結果】心臓MRI撮影時年齢は30.8±14.8歳(男性27,女性17人)。AAD(10-3 mm/Hg)の年代別平均値は10歳台 4.8±2.1 (n=15)、20歳台 4.6±2.1 (n=10)、30,40歳台 2.7±1.4 (n=10)、50,60歳台 2.3±1.0 (n=9)と経年的に低下し、AADは年齢と負の相関関係(p<0.001)を認めた。20歳以上の患者で、AADを年代別正常値と比較すると、患者全体で65.8±32.5%Nで、いずれの年代でも正常値より低かった。また、体表面積で補正した上行大動脈面積は年齢と正の相関関係(p<0.001)を認めたが、上行大動脈面積とAADには相関関係を認めなかった(p=0.38)。循環動態指標との関係では、AADは収縮期血圧と負の相関を示した(p<0.001)が、LVEF, cardiac index, 左室心筋重量との相関関係は認めなかった(p=0.38, 0.09, 0.13)。【結論】ToF術後患者のAADは健常成人と同様に経年的に低下したが、20歳台から60歳まで一貫して健常成人より低かった。上行大動脈径は経年的に拡張したが、AAD低下との相関は認めず、AAD低下の原因と考えられなかった。またAAD低下は左室心筋重量と相関せず後負荷としての所見は認めなかったが、収縮期血圧上昇の原因になっている可能性があり、間接的に心血管イベント発生に寄与することが懸念された。成人期のToF術後患者では、右心機能だけでなく体血圧上昇への注意も重要と考える。