[I-OR13-06] Fontan患者妊娠の問題点とその管理
キーワード:Fontan, 妊娠, 早産
[背景] Fontan患者の妊娠はリスクが高く、「母体死亡率を著明に増加させるもしくは重篤な合併症の可能性がある」とされている。現時点で、妊娠中、妊娠後の血行動態の変化を正確に予測することは困難であり、その適切な管理方法も確立されていない。[方法]九州大学病院でこれまでに経験したFontan患者の妊娠について、その経過や母体・胎児の予後に関して診療録を元に後方視的に検討した。[結果]これまでに5例7妊娠の管理を行い、うち1例は双胎妊娠であった。初回妊娠時の年齢30(29-30)歳、原疾患は全例三尖弁閉鎖で、Fontan手術はLateral tunnel法:3例、Extracardiac conduit法:1例、Kreutzer法:1例であった。妊娠前のNYHAは全例class1、SpO2 93(91-95)%、CTR 44(37-58)%、EF 66(52-74)%、BNP 23(13-25)pg/mlであった。7妊娠のうち、3妊娠は自然流産であり4妊娠が分娩に至った。自然経膣分娩の症例はなく、うち双胎妊娠の1例は前置胎盤からの出血で緊急帝王切開であった。分娩後、2例で出血性合併症(腹腔内出血1例、子宮内出血1例)がみられ、血栓性合併症はみられなかった。児は在胎週数 35(29-38)週、出生体重 1544(980-2285)gで出生し、双胎の2児が呼吸窮迫症候群、新生児仮死のため人工呼吸管理を要した。母体、出生児に死亡例はなかった。 双胎妊娠の症例は妊娠後期に心不全が増悪し酸素投与が必要であった。さらに、分娩後の育児において夜間の哺乳は特に症状を悪化させた。ご家族のサポートを最大限に得て、夜間は充分に睡眠をとるように指導したところ、症状の改善が得られた。[結論]Fontan患者の妊娠では流産の割合が高く、早産・低出生体重の傾向にあり、出血性合併症やチアノーゼ・心不全の増悪が起こることが示された。母体の合併症や心不全の増悪を最小限に抑える妊娠中の管理と、出産後の育児をサポートする体制を構築することが肝要である。