[I-OR14-01] BMPR2遺伝子に新生突然変異を有した肺動脈性肺高血圧症の孤発例
キーワード:PAH, 若年発症, BMPR2変異
【背景】旧来、家族性に発症する肺動脈性肺高血圧症(PAH)を遺伝性PAH(HPAH)と分類、診断していた。遺伝学的検査へのアクセシビリティが本邦で向上するに伴い、孤発性発症の為にこれまで特発性PAHとみなされていた症例においても、遺伝学的素因の寄与が少なくないことが分かってきた。【症例】5歳女児。労作時失神を3回反復し当科へ紹介となった。心音2音の亢進、胸部X線写真で心陰影の拡大、左第2弓の突出、両側中枢側肺動脈陰影の拡張が認められた。6分間歩行検査は310 mであった。心臓カテーテル検査を施行し、平均肺動脈圧 70 mmHgであり、PAHと診断された。本症例に家族歴はなかったが、遺伝学的解析ではBMPR2遺伝子上に変異(c.G1472A:p.R491Q)が認められた。健常両親の解析では、変異は認められず、新生突然変異と判明した。初期治療として、PDE5阻害薬、ER拮抗薬が開始され、3か月後の心臓カテーテル検査で平均肺動脈圧が40mmHgと低下し、また6分間歩行検査でも、351 mと改善が得られ、同治療を継続した。【考察】BMPR2遺伝子新生突然変異を有するHPAH孤発例に対し、経口肺血管拡張薬2剤を用いたupfront combination therapyが開始され、現在、その治療経過を追っている。BMPR2をはじめとした疾患原因遺伝子変異の有無が、予後に与える影響について知られるようになり、遺伝子型情報のPAH診療に於ける重要性が高まりつつある。従来の検査に加えて、遺伝子検査を行うことがPAH治療に与えるインパクトについて考察する。