[I-OR14-03] TBX4遺伝子の機能喪失型変異は肺動脈性肺高血圧症の原因となる
キーワード:PAH, 遺伝子変異, 機能解析
【背景】近年、欧米の肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者で、発生に重要な転写因子をコードするTBX4が疾患関連遺伝子として報告されたが、TBX4の機能に関する検討はなく、また本邦のPAH患者における現状も不明である。【方法】特発性および家族性PAH患者75例を対象として、TBX4遺伝子の全エクソンおよび近傍領域のDNA配列をダイレクトシークエンス法で決定した。検出された配列変化のうち、 日本人アレル頻度1%未満を病的変異候補として、培養細胞を用いて機能解析を行った。【結果】3例(4%)で、新規の病的変異と考えられる配列変化を認めた。いずれの症例も従来報告されているPAH関連遺伝子変異を認めなかった。DNA結合領域内のミスセンス変異c.376C>T(p.Arg126Cys)とフレームシフト変異c.768_769insA(p.Leu257Thr, fs*128)の機能解析では、それぞれ変異タンパクのDNA結合能低下と核内局在能の低下が認められた。エクソン近傍領域の一塩基置換c.282-1G>Aについては、患者由来細胞株から抽出したmRNAを解析し、スプライシング異常を確認した。【結語】PAHに関連するTBX4遺伝子変異はいずれも機能喪失型であり、TBX4タンパクの機能欠失によりPAHを発症する分子機序が世界で初めて示された。