[I-OR14-04] 右室流入血流拡張早期波形解析による肺高血圧症患者の右室拡張能(Elastic recoil/Stiffness, Relaxation, Load)の評価
キーワード:肺高血圧 , 右室拡張能, elastic recoil
【背景】右室拡張早期弛緩を示すE波は心筋細胞の伸縮に起因するElastic recoil/StiffnessとCross-bridging deactivationによるrelaxationおよびLoad(前負荷)の3要素のバランスで形成される。我々はE波形態を減衰振動の運動方程式(d2x/dt2+c・dx/dt+kx=0)にあてはめ、v(t) = -kx0/ω*exp(-ct/2)*sin(ωt) に適応した [v(t): E波速度; k: ばね定数, Elastic recoil; c: 減衰係数, Cross-bridging relaxation; x0; 変位, Load; ω=(4k-c2)1/2/2]。【目的】右室弛緩能評価におけるk (1/s2), c (1/s), x0 (cm)の有用性を検証する。【方法】E波形を上記運動方程式にfittingさせるためにLevenberg-Marquardt法を用いた。左室弛緩と比較した右室弛緩の特徴を明らかにするために正常小児の左右心室流入血流E波を用いて検討した。その後、肺高血圧症例おける右室拡張能を評価した。【結果】全例でk, c, x0が評価可能であった。正常小児右室は左室よりもkおよびcが有意に低値(135.8±50.9 vs 247.3±59.4および10.7±5.4 vs 17.5±5.8, p<0.0001, both)であり、Elastic recoil/stiffnessが低く、cross-bridging deactivationが優れていることが示された。x0は右室が有意に低かった(-0.081±0.029 vs -0.118±0.023, p<0.0001)。 肺高血圧症例では、k は正常に比較して有意に高値であった(k = 155.9±66.7, p<0.001)。また、cも高値を示した(c = 17.9±7.2, p<0.001)。x0は有意差を認めなかった。肺高血圧症ではElastic recoilが増強し、Cross-bridgingの弛緩が劣っていることが判明した。【結語】右室流入血流E波に減衰振動式を適用した拡張能解析はElastic recoil/stiffness, Relaxation, Loadを区別して計測できる有用な方法である。