[I-OR14-05] 小児期発症の特発性および遺伝性肺動脈性肺高血圧症における心電図の臨床的意義
Keywords:肺高血圧, 心電図, 予後
<背景>特発性および遺伝性肺動脈性肺高血圧(i/hPAH)患者において、心電図の右室肥大所見が診断に有用であるが、診断時に心電図異常がどの程度存在し、どの所見が重要かは明らかではない。また、心電図と肺血行動態との関連、予後予測因子の所見については、小児i/hPAHの報告はない。<目的>小期発症のi/hPAHにおける心電図の臨床的意義について検討する。<方法>20歳未満に発症したi/hPAH患者の50例(診断時年齢;11歳(3-20歳))における心電図所見と臨床床データを後方視的に解析した。また、年齢と性別をマッチさせた50例の健常児の心電図所見を比較した。<結果>PAHの診断に、V1のR/S>1かつRまたはqR patternが最も有用で(45例、感度90%、特異度100%)、V1Rが2mV以上は22例(44%)、V5のR/S<1は17例(34%)、右軸偏位(>120度)は16例(32%)、SV6が1mV以上は14例(28%)であった。また、これらの右室肥大所見は健常児には認めなかった。PAH症例でいずれの右室肥大所見を認めなかった症例が5例(10%)存在したが、右軸偏位を>110度と定義すると、感度96%、特異度100%で、PAHを疑うことが可能となった。平均肺動脈圧、肺血管抵抗値と相関を示したのは、V1のR波とV5のS波の絶対値であり、V5のS波の方が高い相関を認めた(平均肺動脈圧;V5S r=0.63、 p=0.002、肺血管抵抗値;V5S r=0.48、p<0.0001)。V4からV6にStrain Tを認めた症例(22例)は、認めなかった症例(17例)と比較して、平均肺動脈圧/平均大動脈圧>1の症例が有意に多かった(Strain Tあり:なし; 15例(68%):5例(29%)、p=0.025)。経過観察中に死亡9例、肺移植1例を認め、治療後にもV5のR/S<1を認めることが予後予測因子(オッズ比=21.0 (95%CI:4.1-108.6)、p=0.001)であった。<結論>小児期発症のi/hPAHにおいて、診断にはV1の高いR波が有用であり、疾患重症度や予後と関連していたのはV5の深いS波であった。