第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

学校保健・疫学・心血管危険因子

一般口演15(I-OR15)
学校保健・疫学・心血管危険因子

2018年7月5日(木) 08:40 〜 09:30 第6会場 (411+412)

座長:泉田 直己(曙町クリニック)
座長:立野 滋(千葉県循環器病センター 小児科)

[I-OR15-04] 小児における心血管危険因子としての家族性高コレステロール血症児頻度の推計

宮崎 あゆみ1, 市村 昇悦2, 小栗 絢子2, 成瀬 隆倫2, 藤田 一2 (1.高岡ふしき病院 小児科, 2.高岡市医師会)

キーワード:家族性高コレステロール血症, 心血管危険因子, 小児生活習慣病予防健診

【目的】家族性高コレステロール血症(FH)は小児期に発見しうる重要な心血管危険因子のひとつであり、早期治療のガイドラインも発表された。小児生活習慣病予防健診におけるnon-HDLコレステロール(non-HDLC)測定値分布からFHの出現頻度を推計し、対応を検討する。【方法】過去10年間に高岡市健診を受診した小4児童を前期群(平成18-22年度 7,725名)と後期群(平成23-27年度 6,884名)に区分し、各々のnon-HDLC分布を比較した上で、全体のFH出現頻度を推計した。【結果】対象全体ではnon-HDLCは肥満度と弱い相関(r=0.30)を認めたが、散布図上、概ね200mg/dl以上の部分に明らかに肥満度と関連しない異常高値群が存在した。健診前後期比較では、肥満度平均値や肥満児割合は有意に減少し、健診継続の効果と考えられた。non-HDLC(mg/dl)も、平均値(標準偏差)は107(24)から103(24)へ(P<0.001)、150以上の高値例割合は4.8%から3.8%へ有意に減少していた(P<0.001)。しかし200mg/dl以上の異常高値例割合は前後期各々0.35%、0.42%と有意な変化がないことより、FH疑い濃厚な群と推察された。前後期全体での頻度は0.38%(56名/14,609名)となり、成人FH頻度0.5%という近年の報告に近似した。【考察】学年全体の健診を行うことにより、non-HDLC≧200mg/dlの基準で小児FHがかなり捕捉可能なことが示唆された。この値はLDLコレステロール180mg/dl程度にあたり、日本動脈硬化学会小児FH診療ガイド 2017で治療を考慮するレベルに一致している。しかし心血管危険因子として早期診断が重要である一方、早期治療に関してはいまだエビデンスに乏しく手探り状態である。【結語】小児のFH頻度推計は成人報告と矛盾しない。小児生活習慣病予防健診はFH早期発見に有用であり、そのためには全員健診が必須である。FH早期治療は今後の重要な検討課題である。