[I-OR16-04] 視床下部テタヌス刺激は延髄腹側心血管調節領域の遷延性興奮を惹起する: 時空間的解剖学的解析
Keywords:循環調節, 中枢神経, 高血圧
【背景】血圧や心拍数は常に交感神経・副交感神経系の支配を受け調節されている。視床下部、特に視床下部背内側核は、心理ストレスに対する循環調節に重要な役割を担い、吻側延髄腹外側部や延髄縫線核などの延髄心血管調節領域を介して交感神経活動を賦活し、血圧上昇や頻脈を惹起すると考えられている。しかし、視床下部と延髄腹側心血管調節領域との機能的および解剖学的結合様式は十分に解明されていない。【目的】視床下部と延髄腹側心血管調節領域の機能的・解剖学的結合様式を解明すること。【方法】新生ラットから摘出間脳下部脳幹脊髄標本を作製し、膜電位感受性色素(di-2-ANEPEQ)を用いて染色した。微小電極を視床下部背内側核へ刺入し、単発電気刺激およびテタヌス電気刺激を与えた。視床下部背内側核を電気刺激した際の、腹側延髄の細胞活動を膜電位イメージングシステムを用いて視覚化し、延髄腹側心血管調節領域における興奮の有無と刺激終了後の興奮持続時間を計測した。また、軸索輸送を利用した逆行性および順行性標識法を若齢成熟ラットに用い、視床下部背内側核から延髄腹外側部への投射を解析した。【結果】視床下部背内側核の電気刺激は、延髄腹側心血管調節領域の興奮を惹起した。テタヌス刺激では、単発刺激と異なり、刺激終了後も遷延する興奮が認められた。逆行性標識法により、延髄腹外側部へ投射線維を送るニューロンが同側の視床下部背内側核に存在することを確認した。また、順行性標識法により、視床下部背内側核ニューロンの投射線維が延髄腹外側部から腹内側部にかけて分布し、その終末がチロシン水酸化酵素に免疫陽性を示す細胞の樹状突起と近接していることを観察した。【結語】視床下部背内側核のニューロンは、延髄腹側心血管調節領域を支配し、交感神経系の興奮遷延機構に重要な働きをしていることが示唆された。