[I-OR17-04] 心血管危険因子の集積と心血管機能変化
キーワード:メタボリック症候群, 心機能, 肥満
【目的】血管危険因子の集積によって成人期の心血管病の発症しやすさを診断するメタボリック症候群の概念が小児にも用いられるようになったが、心血管危険因子の集積と心臓の関係についての知見は乏しい。本研究は心血管危険因子と心臓形態機能変化の関係を明らかにすること。【方法】対象は肥満検診で当院を受診した7-13歳までの小児345例。メタボリック症候群の診断基準を参考にし、腹囲基準値以内 (A群)、腹囲基準値以上 (B群)、腹囲基準値以上と脂質異常、血糖高値、血圧増加のいずれか1つ (C群)、メタボリック症候群(D群)に分類した。心エコーから左房径、左室駆出率、左室肥大の指標として心筋重量容積比、拡張能の指標として壁運動速度比(Em/Am)、大動脈stiffnessを計測した。【成績】A群に比しB群ではHOMA-IRと尿酸が有意に高値(2.6±1.9 vs. 1.6±0.7and 5.1±1.1 vs. 4.6±1.0 mg/dl, p <0.05)、左房径と心筋重量容積比は有意に増大(2.5±0.3 vs. 2.3±0.3 cm and 1.1±0.2 vs. 1.0± 0.2, p < 0.05)し、C群では有意に収縮期血圧および大動脈stiffnessは増加し(115±10 vs. 110±7 mmHg and 1.94±0.45 vs. 1.80 ±0.44, p < 0.01)、Em/Am比は低値(2.97±0.79 vs. 3.08±0.70, p < 0.05)であった。D群ではB、C群に比し有意にHOMA-IRおよび尿酸高値、心筋重量容積比増加、左房径増大、Em/Am比低値を示した。【結論】腹囲が基準値を超えるとインスリン抵抗性と尿酸が増加し左房左室形態に変化がみられ始め、心血管危険因子の集積とともに血管は硬化し左室拡張能が変化する。腹囲増大は心血管リモデリングへのinitial stepといえる。