第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

染色体異常・遺伝子異常

一般口演18(I-OR18)
染色体異常・遺伝子異常

2018年7月5日(木) 14:50 〜 15:40 第6会場 (411+412)

座長:浅田 大(京都府立医科大学 小児科)
座長:野村 裕一(鹿児島市立病院 小児科)

[I-OR18-01] SCN5Aの新規遺伝子変異が見いだされた心筋緻密化障害の1例

岡部 真子1, 宮尾 成明1, 斎藤 和由1, 小澤 綾佳1, 廣野 恵一1, 市田 蕗子1, 畑 由紀子2, 西田 尚樹2, 絹川 弘一郎3 (1.富山大学 小児科, 2.富山大学 法医学, 3.富山大学 循環器内科)

キーワード:SCN5A, 心筋緻密化障害, 心筋症

【背景】SCN5Aは心筋Na チャネルαサブユニットをコードする遺伝子であり、近年、心筋緻密化障害(LVNC)の原因遺伝子としてSCN5A遺伝子が報告されるようになってきているが、まだまだ報告は少ない。今回、我々は、新規のSCN5A遺伝子変異が見いだされたLVNCの症例を経験した。【症例】16歳男児。家族歴では、父方叔父に不整脈あり。12歳の学校検診で心雑音、T波異常、接合部調律を指摘され、精査で軽度の大動脈弁狭窄症(AS)・左室肥大としてフォローされていた。16歳で運動時の失神を認めた。心エコーで心機能低下と左室の拡大・著明な肉柱形成を認めLVNCが疑われた。心臓MRIは心筋の菲薄化と肉柱形成が目立ち、心筋生検では心筋の軽度線維化を伴う心筋障害を認めた。心筋症関連遺伝子について次世代シーケンサを用いて解析したところ、新規のSCN5A遺伝子の一塩基挿入が見いだされた。家族からは本遺伝子変異は見いだされず、de novoが疑われた。ACE阻害剤・β遮断薬を開始したが、6ヶ月で左室駆出率は30% まで低下した。PVCの増加と非持続性心室頻拍を認めるようになったが、Brugada様の心電図やQT延長は認めなかった。今後CRT-D(両心室ペーシング機能つき植込み型除細動器)も検討中である。【考察】LVNCは致死的心室不整脈や、塞栓症、心室機能低下による心不全を来たしうる疾患である。SCN5A遺伝子はBrugada症候群、3型QT延長症候群、家族性洞不全症候群、進行性伝導障害の原因遺伝子として知られている。同遺伝子異常によりこれらの複数の臨床症状が重なって出現する症例が報告されている。自験例は不整脈と心不全が主症状であったが、遺伝学的検査は遺伝子型・表現型相関を知る上で今後の診療の一助となりうると考えられた。【結語】心筋緻密化障害は年少時に心不全で発症することが多いが、本症例では年長時に不整脈と心不全で発症し、その特異な経過にSCN5A遺伝子変異の関与が示唆された。