第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

心血管発生・基礎研究

一般口演19(I-OR19)
心血管発生・基礎研究

2018年7月5日(木) 15:50 〜 16:30 第6会場 (411+412)

座長:浦島 崇(東京慈恵会医科大学 小児科)
座長:加藤 太一(名古屋大学大学院医学系研究科 成長発達医学)

[I-OR19-01] Sry関連HMG-box転写因子Sox17の心内膜前駆細胞の分化と心臓発生に果たす役割

八代 健太1,3, 佐波 理恵1,3, 石田 秀和2,3, 金井 克晃4, 目野 主悦5, クープマン ピーター6, リッカート ヘイコ7, 宮川 繁8, 相賀 裕美子9, 鈴木 憲3, 澤 芳樹8 (1.大阪大学 大学院医学系研究科 心臓再生医療学, 2.大阪大学 大学院医学系研究科 小児科学, 3.ロンドン大学メアリ女王校 バーツ・ロンドン医歯学校 ウィリアム・ハーベイ研究所, 4.東京大学 大学院獣医学専攻 獣医解剖学, 5.九州大学 大学院医学研究院 発生再生学分野, 6.クィーンズランド大学 分子生物科学研究所 分子遺伝発生学分野, 7.ドイツ幹細胞研究所 ヘルムホルツ・ミュンヘン・センター, 8.大阪大学 大学院医学系研究科 心臓血管外科学, 9.国立遺伝学研究所 系統生物研究センター 発生工学研究室)

キーワード:心臓発生, 心内膜, Sox17

心筋を含む心臓を構成する主要な細胞は、心臓前駆細胞から分化すると一般的に考えられている。しかしながら、特異的マーカーが知られていないことから、心内膜細胞の起原および 分化過程の多くが不明のままである。ゼブラフィッシュのcloche変異の表現型は、血球細胞と内皮に分化する能力を有する血管芽細胞と心内膜が共通の起原を有することを示唆している。一方で、心臓前駆細胞の代表的マーカーである転写因子Nkx2-5を発現した細胞が心内膜へと寄与することが示されており、この事実は心臓前駆細胞から心内膜が分化することを支持するように思われる。私達は、心臓前駆細胞の特質と分化機構の解析を目的に、マウス初期胚における心臓前駆細胞の単一細胞遺伝子発現プロファイリングを行った。これにより、従来は内胚葉のマーカーとして信じられてきたSry関連HMG-box転写因子Sox17が、中胚葉の細胞の中で主としてNkx2-5陽性の心臓前駆細胞に一過的に発現し、Sox17を発現する細胞系譜は胚体内では心内膜細胞へと分化することを見いだした。Sox17の心内膜細胞への分化に対する十分性を検証するために、心臓前駆細胞で強制的にSox17の発現を誘導したところ、一部の心筋が内皮マーカーを発現していた。即ち、Sox17は心内膜細胞分化に十分では無いが、内皮への分化に強いバイアスをかける機能が有る。一方、中胚葉特異的にSox17が欠失した場合、心円筒のルーピング異常、心室心筋の肉柱形成不全と、心筋や心内膜の増殖能の著明な低下を認め、Sox17は心臓発生過程に関し、心内膜の分化成熟のみならず、心筋の分化成熟と心臓形態のパターニングに必要であることが判明した。これらの得られた新知見を軸に、心臓発生に寄与する細胞系譜と心内膜の果たす役割に関して議論したい。