[I-OR19-02] iPS細胞心筋を用いたQT延長症候群3型への診断利用
キーワード:QT延長症候群, iPS細胞, ゲノム編集
【背景】QT延長症候群(LQTS)は遺伝性不整脈疾患で、診断や治療方針の検討に遺伝子検査が有用とされている。しかし、疾患特異的な浸透率の低さや幅広い表現型から遺伝子検査が充分な役割を果たしているとは言い難い。よって、個々の表現型に即した診断ツールの開発が必要である。【目的】LQTS患者由来iPS細胞から分化した心筋細胞を用いてin vitroでの診断系を構築する。【方法】SCN5A N406K変異をもつLQTS 3型と診断された20歳女性の皮膚線維芽細胞からiPS細胞を樹立し心筋細胞へと分化させた。(LQT3N406K–iPSC CMs) この分化心筋に対して、Multi–electrode arrayシステムを使用して、心電図でのQT時間に相当するfield potential duration(FPD)を測定した。また、Mexiletineを用いてFPDの変化率(ΔFPD)を比較した。心筋拍動数によるFPD値の補正は、Fridericia法を用いた(FPDc)。さらに、FPDの違いがSCN5A N406K変異に由来することを証明するためにCRISPR/Cas9を用いてgene correctionを行ったiPS細胞(LQT3corr–iPSCs)を作成し、その分化心筋(LQT3corr–iPSC CMs)のFPDも測定した。【結果】LQT3N406K–iPSC CMsのFPDcはLQT3corr–iPSC CMsと比較して延長していた。また、Mexiletine 10µMに対するΔFPDは-12.7±2.9% vs. -1.2±5.0% (p<0.05)であった。パッチクランプ法でLQT3corr–iPSC CMsのINa–Late densityの正常化を認めた。【考察】INa–Late阻害でΔFPDは活動電位時間におけるINa–Lateの寄与度を反映していると考えられ、本手法によりLQT3心筋のINa–Late増加を検出できることが示された。本手法により、INa–Latee関連疾患スクリーニングが可能となり、遺伝子検査に随伴する倫理的問題を回避できるだけでなく、表現型に即した診断が可能である。さらに本手法は他のサブタイプのLQTSや心筋チャネル病にも応用できる可能性がある。