[I-OR19-03] 半月弁型人工弁(3弁)の新規開発に向けた機械工学的弁機能評価からの弁尖デザインの最適化
キーワード:人工弁, 弁機能, 機械工学
【目的】先天性心疾患治療において、外科的または経カテーテル的に埋植される既製半月弁型人工弁には異種動物由来材料が用いられている。成人に比し早く進行する材料劣化(異物反応による硬化、石灰化)と偽性内膜増殖による弁機能不全に対する再インターベンションが問題である。弁尖素材とデザインの最適化による課題解決が必要であり、今回後者について機械工学的手法を用いて検討した。【方法】ヒト大動脈弁の3次元的形状を模した径21mmの3弁モデルをウシ心のう膜と同等の弾性をもつポリウレタンシートで作製し、高速度カメラによる弁開放観察が可能なWindkesselモデル循環回路内のValsalva洞を模したアクリル容器に装填した。心拍出量5L/min、心拍数70rpm下で、弁尖厚(mm, Ct)と弁接合中央の接合長とヒト大動脈弁接合長正常値との比(Cc ratio)を変化させ、有効弁口面積(EOA)、逆流率(Rf)、弁圧較差(Δp)、閉鎖時間比(tc/T)を測定した。【結果】ISO人工弁規格値を満たすCt, Cc ratioは、EOA>1.05cm2:Ct<0.25、Cc ratio0.5~2.0、Rf<10%:Ct 0.08~0.25、Cc ratio 0.5~2.0であった。一方Δp<10mmHg:Ct<0.15、Cc ratio <1.2であった。tc/TはCT、Cc ratioによらず0.07~0.08で一定であった。以上より径21mmの3弁では、弁尖はCt0.08~0.15mmかつCc ratio 0.5~1.2の条件を満たす必要が示唆された。【結語】新規3弁型人工弁作成にあたり、ISO規格上満たすべき弁尖条件を機械工学的手法により抽出した。各種弁サイズにおける弁尖の素材と物性の選択に本評価系は有用であると考えられた。