[I-OR20-03] 造影検査後の壊死性腸炎発症予防として検査後の維持輸液と腸管安静の有効性について。
キーワード:壊死性腸炎, 造影検査, 先天性心疾患
【背景】壊死性腸炎(NEC)は、しばしば先天性心疾患(CHD)に合併する。当院では造影検査後に発症する例を認め、造影剤の血管収縮作用によって腸管虚血に陥っている可能性を推察している。【方法】2015年1月から2017年12月まで、2か月未満の患児に施行した造影検査 374例(造影CT 276例、カテーテル検査 98例)を検討した。2015年1月から2016年12月までの241例(造影CT 169例、カテーテル検査 72例)をA群、2017年1月から12月までの133例(造影CT 107例、カテーテル検査 26例)をB群とし、A群は検査2時間前から絶食のみで検査終了後すぐに経腸栄養開始し、B群は検査2時間前から24時間後まで絶食と維持輸液(4ml/kg/h)を施行した。【結果】Modified Bell分類でIIA以上と診断されたNEC患者は3例(造影CT 2例、カテーテル検査 1例)で、さらにNECを疑う画像所見はないが検査直後に血便を認めた例を2例(造影CT 1例、カテーテル検査 1例)認めた。いずれもA群の症例であり、5/241例(2.07%)の発症率であった。一方、B群では造影検査後に血便を認める症例は1例もなかった。また造影剤投与量、出生体重、EF、Qp/Qs、CIを両群で比較したが、いずれも有意差を認めなかった。【考察】造影検査の副作用として造影剤腎症が知られており、造影剤の投与後に起こる血管攣縮が機序として考えられていることから造影検査後のNEC発症についても同様の機序を推察した。造影剤腎症では脱水が危険因子とされており、検査前から生理食塩水輸液(1ml/kg/h)を行い、検査終了後も継続することが推奨されている。本研究の対象が新生児かつCHD合併であり、前負荷過剰を懸念して維持輸液を併用し、検査後も腸管安静を行ったところ造影検査後のNECの発症はなくなった。このことから脱水予防と腸管の酸素需要を下げたことでNECの発症を予防した可能性がある。【結論】造影検査後のNEC発症予防として維持輸液による脱水予防と腸管安静が有効であることが示唆された。