[I-OR21-03] 皮下植込み型除細動器(S-ICD)植込みを行った体重20kgの心筋緻密化障害の1例
Keywords:皮下植え込み型除細動器, 心筋緻密化障害, 致死的不整脈
【はじめに】皮下植込み型除細動器(S-ICD)は2016年から我が国でも使用可能となったが、体格の小さな小児での報告例は世界でも多くない。今回心筋緻密化障害に致死性不整脈を伴い、蘇生後にS-ICD植込み術を施行した体重20kgの9歳男児例を経験したので報告する。【症例】家族歴、既往歴はなく学校心臓検診で異常は指摘されていなかった。自宅近くで友人と走って遊んでいた際に突然倒れ、母親らによりbystander CPRが開始された。救急隊到着時にはPEAで当院に搬送。蘇生に反応しないため、直ちにVA-ECMO装着を行いイベントから57分後に循環を確立した。CTR 47%と心拡大ないが、心エコーで心筋性状の異常とmoderate MRを認めた。心収縮は著しく低下し翌日にBiVAD装着、心筋は硬く変性しており、病理では炎症細胞浸潤は認めなかった。心機能改善に伴い11日後にBiVADから離脱。ACE阻害薬、β遮断薬、アミオダロンの内服を開始した。虚血性脳症の為に気管切開、胃瘻造設が必要であった。心筋症を背景とした運動関連性の致死性不整脈が疑われたが、当初は寝たきりの可能性が高いと判断しICD植込みを見送っていた。しかし、その後の精神運動機能の改善は目覚ましく、食事、会話、歩行が可能となり、復学するまで回復したことからICD適応と判断した。本症例では、心筋緻密化障害(LVEF 56%, LVDd 50mm(123%ofN), mild~moderate MR)を認めており、今後心臓移植適応となる可能性があり、緊急でのLVAD装着の可能性があること、また、成長過程であることから、経静脈や開胸ICDではなくS-ICDを選択した。植込み術は問題なく施行可能で、Vf誘発による適切作動が確認できた。現在外来観察中であるが不適切作動は認めていない。【結語】体格の小さな小児におけるS-ICD植え込み術の報告例はまだ少ないが、適応を慎重に判断すれば新たな選択肢の一つとして有用であると考えられた。今後S-ICDデバイスの小型化が望まれる。