第54回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

心筋心膜疾患

一般口演21(I-OR21)
心筋心膜疾患 1

2018年7月5日(木) 17:40 〜 18:40 第6会場 (411+412)

座長:廣野 恵一(富山大学医学部 小児科)
座長:星合 美奈子(山梨県立中央病院 小児循環器病センター)

[I-OR21-06] 先天性心膜欠損:右開胸手術におけるピットフォール

名和 智裕1, 澤田 まどか1, 高室 基樹1, 横澤 正人1, 荒木 大2, 夷岡 徳彦2, 大場 淳一2 (1.北海道立子ども総合医療・療育センター 循環器科, 2.北海道立子ども総合医療・療育センター 心臓血管外科)

キーワード:先天性心膜欠損, 右開胸手術, 心房中隔欠損

【背景】当院では心房中隔欠損(ASD)に対して、美容を考慮し右開胸で手術を施行し良好な成績を収めている。今回、右開胸手術のピットフォールと思われる症例を経験したので報告する。【症例】症例は11歳の男児。出生時の心エコーでASDと診断されていたが、生来自覚症状なく経過していた。胸部X線では心陰影の左方偏位は認めず、心電図では右軸偏位、右室肥大、心エコーでは多孔性のASDで右心系の容量負荷所見あり、心臓カテーテル検査では、Qp/Qs=1.8, Rp=2.0 u・m2であり手術の方針となった。分離肺換気、左側臥位、右後側方、第4肋間開胸で右肺を脱気し心膜を切開、人工心肺を導入し心停止下に欠損孔を閉鎖した。遮断解除後、自己心拍の再開はスムーズで人工心肺から離脱した。脱気目的に右胸腔と心嚢内に温生食を貯留し、両肺換気を再開したところ、突然、SpO2と血圧の低下を認めた。気管内吸引は白色痰少量で、経食道心エコーで左心室の動きは問題なし。原因不明であったが、換気条件の強化と、カテコラミンの投与で血行動態は安定し閉胸した。術直後、左胸腔から右胸水と同じ性状の胸水と空気がドレナージされた。手術手技により左胸腔と心嚢が交通することは考えにくく、後日、心臓MRI検査で先天性心膜欠損と診断した。【考察】先天性心膜欠損は胸膜心膜管の発生異常であり、胸膜欠損も伴うことが多い。本症例の低酸素と血圧低下のイベントの原因として、大量の洗浄水が右胸腔→心嚢→左胸腔に流入して換気が低下したことと、右肺換気再開直後は右肺の血流が低下しガス交換に寄与せず酸素化の悪化と二酸化炭素の貯留となり、呼吸性アシドースから循環不全になったと推察された。また、左室造影を見返すと、左4弓の突出を認め、左側心膜欠損が疑われる所見であった。【結語】術前に先天性心膜欠損を診断することが難しい場合もあり、右開胸手術時には注意を要する。