[I-PD02-01] 胎児不整脈に対する新しい経母体薬物療法 -先天性房室ブロック予防のためのヒドロキシクロロキンと、QT延長症候群に伴う心室頻拍の治療-
キーワード:胎児治療, 先天性房室ブロック, 先天性QT延長症候群
胎児不整脈の予防・治療のなかで、ジゴキシン、ソタロール、フレカイニドによる胎児上室頻拍の治療や、フッ化ステロイドによる母体抗SSA抗体関連先天性房室ブロック(CHB)予防は、ガイドラインは確立していないものの比較的臨床経験が多い。本発表では、それ以外の経母体薬物療法の2者を取り上げる。【ヒドロキシクロロキン(HCQ)によるCHB再発予防】CHBの多くは胎児診断されたとき既に完全ブロックで不可逆的であるため、その発症予防が重視されている。CHBの発生率は抗SSA抗体陽性母体の1~2%であるが、前児がCHBであった場合は12-20%であるため経母体薬物療法の適応と考えられる。欧米におけるCHB再発予防の後方視的検討でHCQ投与群では非投与群と比べてCHB発症率が約1/3に低下したため、「HCQによるCHB再発抑制」の臨床試験(PATCH)が米国で実施中である。我が国でも共同演者の横川らが遠隔診療を用いて全国の前児CHBの抗SSA抗体陽性母体を対象とした医師主導臨床試験(J-PATCH)が始まった。その現況を概説する。【torsade de pointes(Tdp)を合併した先天性QT延長症候群(LQTS)の胎児治療】LQTSのなかには胎児・新生児期からTdpや機能的房室ブロックを伴って重症に経過する特殊な一群がある。頻度の高い遺伝子型はLQT2 (KCNH2変異)とLQT3 (SCN5A変異)であり、原因不明の胎児死亡例からもこれらの遺伝子変異が検出されている。胎児Tdpの経母体治療例は文献的にも少なく確立していないが、自験例を含めMg、β遮断薬、メキシレチン、リドカイン等の経母体薬物療法が有効であった例を報告する。胎児HRをもとにLQTSを効率良くスクリーニングするアルゴリズム開発のための国際コンソーシアムへの参加(予定)についても概説する。