The 54th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム1(I-S01)
学校心臓検診で抽出された不整脈の管理:ボーダーライン症例をどうするか?

Thu. Jul 5, 2018 8:40 AM - 10:10 AM 第1会場 (メインホール)

座長:鈴木 嗣敏(大阪市立総合医療センター 小児不整脈科)
座長:吉永 正夫(鹿児島医療センター 小児科)

[I-S01-02] 学校心臓検診で抽出された不整脈の管理 -無症状でWPW型心電図をしめす場合-

吉田 葉子 (大阪市立総合医療センター小児不整脈科)

Keywords:学校心臓検診, WPW症候群, 無症状

 WPW型心電図の学校心臓検診での検出頻度は0.1-0.2%程度で、起こりうる不整脈は、房室回帰性頻拍と心房細動などの上室頻拍に伴うrapid ventricular responseである。学校心臓検診で発見された無症状のWPW型心電図を示すものを診る場合、特に問題となるのは、不整脈リスクのない束枝心室副伝導路との鑑別、rapid ventricular responseによる突然死リスク推定である。
 束枝心室副伝導路は確定診断がつけば管理不要であるが、小さなΔ波を伴う体表心電図の所見ではWPW症候群と鑑別診断が難しいことも多く、アデノシン三リン酸負荷試験が有用である。
 突然死の頻度や高リスク群選別についてなお議論が残る部分がある。今年報告された学校管理下院外心停止の全国的登録調査で、5年間210例の心原性心停止の原疾患で、WPW症候群は4例(1.4%)で先天性QT延長症候群と同数であった。リスク推定においては副伝導路順行性不応期が短い場合や複数副伝導路が存在する場合は高リスクとされるものの、これらを判別するためには侵襲的電気生理学的検査が必要となる。2012年にPACES/HRSが発表した無症候性の心室早期興奮を示す若年者についてのExpert Consensus Statementでは、運動負荷試験で心拍数上昇により突然Δ波が消失するものは、副伝導路不応期が長く低リスクとしている。2017年のEHRAによる上室性不整脈についての Consensus documentでは、無症候性患者の管理において①リスク評価のための電気生理学的検査、②以下のものに対するカテーテルアブレーション治療:無症候性順行性不応期<240ms・房室回帰性頻拍に続いて誘発される早期興奮を伴う心房細動・複数副伝導路を中程度の推奨としている。今回、日本での学校心臓検診の現場の実情もふまえ、このテーマについて議論したい。