[I-S05-02] 三次元エコーを用いた房室弁評価
キーワード:three-dimensional echocardiography, atrioventricular valve, congenital heart disease
房室弁複合体は、心房・心室・乳頭筋の動きに加えて、心腔内の血圧や血流と連動して複雑に機能している。房室弁複合体全体の3次元運動に加えて心腔内の血流を評価できる3次元心エコーは、実臨床で使用できる画像モダリティーの中では最も有力な評価ツールである。3次元エコーで得られた画像情報を再構築する表示方法にはvolume rendering (VR)法とmulti-planar reconstruction (MPR)法の2種類があり、VRでは心房側から観察した房室弁を表示することができる。これは外科医が術中に観察する弁構造に近い像を再現することになり、房室弁の全体像の把握にも優れる。しかしVR法は3次元表示の画像を作るために様々な補完を行っていることから、弁が実際よりも厚ぼったく表示され、これはエコー輝度の高い部位で特に顕著となる。よって、VR法は全体像の把握には優れるが詳細な評価については難がある。一方、MPR法は3次元エコーデータを互いに直交する3断面で切り直して表示する方法であり、任意の断面における2次元表示が可能である。詳細な観察に加えて距離や面積などの定量評価も可能であり、房室弁の開口面積の測定や、弁逆流におけるvena contractaの断面積の計測等に応用することができる。また、手術前の経胸壁の3次元画像データから、MPR法により術中経食道エコー(TEE)の画像をシミュレーションすることも可能である。房室弁評価における3次元心エコーの役割と応用について実際の症例を交えて解説を行う。