[I-S05-06] 成人先天性心疾患手術のための血流イメージング
キーワード:成人先天性心疾患手術, 血流解析, シミュレーション医学
血流解析は循環器画像診断に流体力学を統合してなされるイメージング技術であるが、CTに基づくシミュレーション、MRIや超音波に基づく血流可視化など多様なものがある。本講演では成人先天性心疾患に対する新たなアセスメントツールとしての血流イメージングの役割を症例を通じて議論する。 流体シミュレーションでは計算値であるが、コンピュータ・グラフィックスと組み合わせCTでの詳細な3D形状を基に仮想手術シミュレーションが可能である。従来冠動脈病変や大動脈疾患での動脈硬化等のリスク評価や、Fontanや大動脈弓再建などの術後血行動態評価に用いられることが多かったが、我々は成人期Fontanの再手術で複数通りの想定される術式がある場合に用いている。特に下大静脈欠損では成人期に肝因子の不均衡分布に伴うチアノーゼの残存の問題があり、術前のシミュレーションは術後の肝因子分布の予測に大いに役立つ。 一方4D flow MRIは実計測での血行動態評価が可能であり、我々は非造影で心拍動を追跡し、心室容積や弁逆流量を定量し、同時にエネルギー損失を計測し、解剖が複雑な修正大血管転位症やファロー類縁疾患術後成人期の右室流出路等の評価に用いている。また超音波では心内渦流のパターンの解析が簡易に可能であると同時に左室流入血流から左室心内圧較差IVPG (intraventricular pressure gradient)が計測可能であり、左室の能動拡張が計測できるため、肺動脈弁術後に左室が前負荷増大に耐えうるかどうか、また単心室循環の拡張不全の評価などに用いている。 本稿では我々が行っている成人先天性心疾患の手術症例に関する血流解析でのアセスメントを通じ各々のモダリティの利点、欠点を議論するとともに、手術適応や術式を含めた包括的なアセスメントについて議論する。