[II-MIS01-03] 小児ECMOの回路交換
小児領域におけるECMO治療は、すでに循環不全、呼吸不全と様々な病態に適応されている。循環不全においては、術後の人工心肺離脱困難症において短期間補助を目的に導入される症例も増えつつある。しかし、長期補助を必要とする患児もまた存在し、そのような患児にはECMOシステムの回路交換も必要となってくる。小さな患児にとっての回路交換は大きな侵襲となり、回路交換を契機に一時的な循環破綻をきたす症例もある。そのためにも、ECMOシステムの回路交換はでき得る限り少なく治療を進めることが理想と考えられる。成人領域ではシステムがほぼ確立されているが、小児領域では件数も少ないことからいまだに自施設回路、自施設システムに依存しており、回路交換における基準、手順も標準化されてはいない。今回のミニシンポジウムでは、我々の施設における回路交換に焦点を当てて報告する。当施設におけるECMOシステムは、市販されている標準回路を使用している。回路交換の基準は動脈側の血栓、ガス交換能の低下、溶血を目安に行っている。ガス交換能は体外循環用血液学的パラメータモニタを使用しているため再循環回路を設けている。再循環を行っていることで人工肺流量が増し、血流停滞による血栓形成を防ぐ可能性が考えられ、回路交換までの時間の延長が図られている。低体重児になるほど、回路交換において循環血液量の大部分が交換されることとなる。そのため、回路交換による血液データの急激な変化、循環作動薬血中濃度の低下、体温低下などに留意する必要がある。ECMOシステムの回路交換は術野で回路接続を行う医師、交換用回路を準備し循環を行う臨床工学技士、患児の状態を把握する看護師など、多くの医療職が関わる治療手技となる。それゆえに各職種が最大限の実力を身に付けることが、患児の負担を少しでも軽減する一助になると考える。