[II-MOR07-05] 川崎病における大動脈基部及び分岐部大動脈の組織学的変化
キーワード:川崎病, 組織学的変化, 大動脈
【目的】川崎病は乳幼児に好発する系統的血管炎であり、冠状動脈に代表される中小動脈が主に侵襲される。前回の本学会では川崎病剖検例の胸腹部大動脈について病理組織学的検討を行い、急性期には胸腹部大動脈にも軽度ながらマクロファージ(Mφ)主体の炎症が生じ、冠状動脈炎と同様の経時的変化を示すことを報告した。今回は大動脈の部位による炎症の差を検討するため、大動脈基部と分岐のない胸腹部大動脈、そして肋間動脈などの分岐部近傍の大動脈について組織学的検索を行い比較検討した。【方法】川崎病剖検例のうち、大動脈基部と胸腹部大動脈の検索が可能であった12例(急性期6例、遠隔期6例)、また、分岐部大動脈と胸腹部大動脈の検索が可能であった8例(急性期4例、遠隔期4例)を検索対象とした。HE、EVG、AM染色を用いて動脈構築と炎症細胞の局在・程度について評価した。さらに、炎症細胞の評価のためにMφ(CD163)の免疫染色を行った。【結果】「急性期」:大動脈基部における炎症細胞浸潤は全例で胸腹部大動脈よりも高度であったが、弾性線維の断裂は大動脈基部、胸腹部共に認められなかった。一方、分岐部大動脈と胸腹部大動脈との比較では、4例中2例で分岐部大動脈における炎症細胞浸潤がより高度であったが、分岐部、胸腹部大動脈共に弾性線維の断裂は認められなかった。また、分岐動脈においては分岐直後の弾性型から筋型動脈への移行部で高度な炎症細胞浸潤、内腔拡張を伴う弾性線維の断裂が認められた。「遠隔期」大動脈基部、胸腹部大動脈、分岐部大動脈のいずれも炎症細胞浸潤は乏しく、弾性線維の断裂も見出せなかった。【結語】大動脈基部および分岐部大動脈は、分岐を伴わない部位の胸腹部大動脈よりも炎症細胞浸潤は高度であるが、大動脈血管構築の破壊を伴うことはまれと考えられた。