[II-MOR09-01] 母体デキサメタゾン(DEX)投与が有効であった母体抗SS-A抗体による胎児心筋炎・心内膜繊維弾性症症例
Keywords:母体抗SSA抗体, 心内膜繊維弾性症, デキサメタゾン
【緒言】胎盤移行した母体抗SS-A抗体は房室結節に作用して先天性完全房室ブロック(CAVB)を起こすだけでなく、心筋にも作用して胎児心筋炎や心内膜繊維弾性症(EFE)を発症させ重度の心機能障害を引き起こすことがある。母体ステロイド投与を行っても広範囲にEFEを認める場合は予後は不良で子宮内胎児死亡、新生児死亡することが多い。今回、母体DEX投与により右室機能が劇的に改善し救命できた症例を経験したので報告する。【症例】母体36歳、1経妊、1経産。在胎20週で胎児徐脈であったが見逃されていた。在胎22週に胎児徐脈・胎児水腫に気づかれ在胎23週に当院へ紹介となった。胎児心臓超音波検査で徐脈はCAVBであった。また四腔断面で主に右室壁運動低下、右室全体の心内膜輝度上昇、右室内腔狭小化を認め心筋炎・EFEと診断した。左室EFEは軽度で左心機能は保たれていた。母体SS-A抗体陽性と判明し、母体DEX投与(開始量8mg、以降2週間毎に2mgずつ2mgまで減量)を開始した。在胎23週では肺動脈血流は逆行性で中等度の三尖弁逆流と肺動脈弁逆流も伴いcircular shuntとなっていたが、DEX投与開始後すぐに右室壁運動は改善、三尖弁・肺動脈弁逆流は消失し右室内腔は徐々に拡大した。在胎30週では、動脈管血流は逆行性だが肺動脈順行性血流を認め、在胎35週には動脈管血流が両方向性になる程度の肺動脈順行性血流を確認できた。妊娠36週4日、1904gで出生し、同日体外式ペースメーカーDDD120bpmを開始した。出生後の超音波検査でも右室低形成とEFE所見は残るが、順行性肺動脈血流のみで良好な肺循環が保たれている。【考察】母体抗SS-A抗体によるCAVBに続発する胎児心筋炎・EFEの治療への母体ステロイド治療の有効性は確立していないが、本症例のように母体DEX投与により心機能を回復させることもある。今後拡張型心筋症となる可能性もあり、中長期的に厳重な管理が必要である。