[II-MOR09-03] 正確な胎児診断に基づく新生児管理は無脾症候群の予後を改善する
Keywords:無脾症候群, 肺静脈狭窄, 胎児診断
【背景】無脾症候群、中でも高度の肺静脈狭窄を伴う最重症例の予後は従来不良であったが、カテーテル治療の導入により救命例が増加している。【目的】肺静脈狭窄に対するカテーテル治療導入後の、当施設における無脾症候群胎児診断例の予後を検討すること。【方法】2014年1月から2017年12月までの4年間に当施設にて胎児診断された無脾症候群症例24例について、胎児期および出生後の経過について診療録より後方視的に検討した。【結果】胎児心エコーにて重度肺静脈狭窄と診断されたのは24例中8例 (33%) であった。胎児期に重度肺静脈狭窄なしと診断された16例は産科適応での分娩を行った (8例が経膣分娩、8例が産科適応による帝王切開)。全例生存出生し、新生児期に肺静脈に対する侵襲的処置を要した症例はなかった。3例が死亡 (2例が心不全、1例が感染症) し、13/16例 (81%) が生存している。生存例中9例がフォンタン手術に到達している。一方、胎児期に重度肺静脈狭窄ありと診断された8例は、両親に積極的治療の希望を確認した結果、1例が胎児死亡、1例が緩和ケアの方針となり、6例に対して出生後早期の児の治療を目的とした計画分娩を行った (帝王切開5例、誘発分娩1例)。6例いずれも生後7日までに肺静脈狭窄に対する侵襲的治療を要した (ステント留置5例、外科的修復1例)。うち1例が感染症により死亡し、5/6例 (83%) が生存している。5例中2例がフォンタン手術到達、1例がグレン手術到達、2例がグレン手術待機中である。全体の生存率は18/22 (82%) であり、重度肺静脈狭窄を有する群 (83%) と有しない群 (81%) の生存率に有意差を認めなかった。【結論】無脾症候群の予後決定因子とされる重症肺静脈狭窄に対し、計画分娩、肺静脈ステント治療を含む計画的治療が無脾症候群の予後を改善する可能性がある。肺静脈狭窄部位の詳細な形態評価を含む正確な胎児診断が治療成功の鍵と考えられた。