[II-MOR09-05] 低形成左室胎児への母体酸素療法
Keywords:胎児心臓病, 母体酸素療法, 左心低形成
【背景】低形成左室をもつ胎児に対して、母体への酸素投与は胎児の肺血流、肺静脈還流量を増加させ、左室の成長がみられると報告されている。当院では、低形成左室の胎児を持つ母体に対して、胎児の左室成長を目的として2012年から母体酸素療法を行っている。【目的】当院で行った母体酸素療法例の経過を検討する。【対象と方法】当院で母体酸素療法を行った8例中CDH合併例を除いた6例。胎児期、生後の心エコー所見、臨床経過を後方視的に検討。【結果】当院初診は在胎28週6日~36週5日(中央値33週)。全例が心室のアンバランスか佐心低形成症候群の疑いで受診した。初診時のMV径/TV径は0.37~0.66(中央値0.55)。低形成左室以外に胎児期に診断されていた心疾患は、大動脈縮窄(COA)+大動脈弁狭窄+卵円孔早期閉鎖(PCFO)が1例、僧帽弁副組織による左室流出路狭窄が1例、COA+心室中隔欠損が1例、PCFOのみが1例、COA+両側上大静脈が1例だった。母体酸素療法は、間欠的に60%酸素マスク投与で行った。療法中に母体の大きな合併症は認めなかった。酸素療法期間は16日から49日間だった。出生直前の胎児心エコーでのMV径/TV径は0.39~0.78(中央値0.65)で、酸素療法前後での変化は-0.04~+0.25(中央値+0.06)。一番左室が小さめだった症例はCOA+AS+PCFO合併例で、両側肺動脈バンディング術後に二心室治療を行ったが、6ヵ月に突然死。他の2例のCOA指摘例もCOA解除術+PAB後に二心室修復術を行った。他の3例は症候化するような疾患はなく、心不全症状もみとめなかった。【考察とまとめ】全例で母体酸素療法を継続することは可能だった。MV/TV径が大きくなる例もあるが変化の乏しい例もみとめたが、合併疾患の有無や酸素療法の期間との関係性は明かではないが、全例2心室治療を施行し退院することができた。