[II-MOR10-01] 新生児期から治療した心外合併症のないQT延長症候群8型の2例
Keywords:QT延長症候群, Timothy症候群, 新生児
【背景】QT延長症候群 (LQTS) 8型 (LQT8) は、合指症、顔貌異常、精神神経症状等を伴う場合Timothy症候群といわれ、非常にまれな疾患と考えられてきた。本疾患はL型CaチャネルのαサブユニットをコードするCACNA1Cの遺伝子異常が原因となる。近年心外合併症を伴わない症例が多数報告され、本疾患はこれまで考えられてきたよりまれではない可能性が示唆されているが、予後や治療法について未だ不明な点が多い。【症例1】胎児期の異常はなし。在胎38週6日、前医にて出生。出生後に徐脈を指摘され心電図でLQTS (QT 680ms, QTc 694ms)、2:1房室ブロックと診断された。日齢1にtorsades de pointes (TdP) を繰り返したため当院に転院し、メキシレチンによる治療開始。その後TdPの再発はなく、日齢2には2:1房室ブロックも改善した。遺伝子検査でCACNA1C p.G402S (ex.8) が同定され、de novo変異であった。メキシレチンによる治療を継続したが、急な心拍数上昇時にT波交代現象 (TWA) を繰り返したため、日齢54にプロプラノロールを追加しTWAは減少した。現在生後4ヶ月で、その後の心イベントなく経過している。【症例2】母がLQTSのため胎児期より経過観察、胎児期の異常はなし。在胎37週5日、当院にて予定帝王切開で出生。出生後心イベントはなかったが、日齢26の心電図でも著明なQT延長 (QT 350ms, QTc 527ms) を認めたため、プロプラノロールを開始した。遺伝子検査でCACNA1C p.M1476Rが同定され、同じ変異を母にも認めた。現在5歳だがこれまで心イベントの発生はない。【結論】LQT8の臨床像は遺伝子型により新生児期から重症度が大きく異なっていた。今後多くの症例を検討し、遺伝子型と重症度の関係、発作の契機や治療法についてより明確にする必要がある。