ミニオーラルセッション11（II-MOR11）
複雑心奇形

[II-MOR11-02] Restrictive ASDを合併したHLHSに対するASDステント留置治療の経験

^○大中臣 康子¹, 麻生 俊英¹, 武田 裕子¹, 太田 教隆¹, 小林 真理子¹, 上田 秀明² (1.神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科, 2.神奈川県立こども医療センター 循環器内科)

Keywords:Hybrid治療, 左心低形成症候群, 胎児診断

【背景】心房中隔欠損を伴わない左心低形成症候群（HLHS with Intact Atrial Septum: IAS）の治療成績は極めて不良である。この疾患群に対し経右房的心房中隔ステント留置を伴うHybrid治療をおこなったので報告する。【対象】両側肺動脈絞扼術(PAB-bil)を初回手術とする段階的アプローチを採用した2007年から10年間、HLHS 40例のうちHLHS with IAS 4例(10%)。胎児診断例は3例で、帝王切開による計画的出産・治療開始した。在胎38週、体重2.6±0.3kg(2.0-2.9kg)。生後2～48時間でHybrid治療を行った。1例は他院出生の非胎児診断例で(在胎35週4日)、高度の低酸素と重篤な呼吸不全にて搬送、HLHS with IASの診断で出生7時間後にHybrid治療を行った。【術前状態】4例中3例は生直後に気管内挿管。動脈血ガス分析では高度低酸素血症、アシドーシスの所見：PaO2 27.9±9.9mmHg(19.7-41.5mmHg)、Lac 3.1±2.2(1.2-6.1)。【方法】心臓カテーテル検査室にて胸骨正中切開、右心房よりシースを挿入、心表面心エコーガイド下に心房中隔の最も薄い箇所を狙って穿刺しASDステントを留置した。全例で左房圧は低下、酸素飽和度が上昇しPAB-bilを施行(3.0mm Gore-Tex graft幅2mm輪、周径8-10mm)。【結果】TCPC完成1例、BCPS待機1例。死亡2例。1例はAA, MS, LV sinusoidal communicationがあり、ASDステント挿入にて左房減圧後より心筋虚血にてショックに陥り死亡、左室依存性冠潅流の存在が疑われた。残り1例は非胎児診断例で、術後に右肺静脈の還流異常と肺静脈狭窄が見つかり生後6日目に修復術を行ったが心不全、呼吸不全で失った。不成功２例の原因は、左室依存性冠潅流や合併病変など診断や適応に問題があったかもしれない。【結語】出生後早期に左房の減圧が必要となるHLHS with IASの救命のためには、出生直後から計画的に、迅速に低侵襲Hybrid治療に移行することが重要であり、これらを円滑に進めるためには胎児診断が欠かせない。