[II-MOR12-02] バルサルバ手技による平均循環充満圧推定
Keywords:心不全, 静脈機能, うっ血
背景:平均循環充満圧(mcfp)は静脈還流圧すなわちFrank-Starling機序を動員する生体反応を定量化できる重要な循環機能指標である。測定には循環を完全に停止する必要があるため末梢充満圧による代用やバルサルバ手技による理論的推定が用いられる。より生理的条件に近い後者の妥当性について、ラット心不全モデルを用いて検討した。方法:心筋特異的放射線内部被爆(n=20)およびDOCA-salt-nephrectomy (n=10)を用いて作成したラット心不全モデルとコントロールラット (n=10)において圧ワイヤーを上大静脈および左心室に留置して心室圧容積関係を構築しながらバルサルバ手技 (吸気固定15-20 cmH2O)を行い、平均循環充満圧 (mcfPv)を推定した。検査後塩化カリウムを静注して急速に心停止させ、上行大動脈圧および中心静脈圧 (CVP)から平均循環充満圧を実測(mcfPa)した。結果:mcfPaはカテーテル検査前のトレッドミルによる運動耐用能と相関を示し (workload p=0.0015, time p=0.008)、また体重により標準化した肺重量とも正の相関を認めた(p<0.05)。mcfPvとmcfPaは極めて強い正の相関を示した(mcfPa = 6.3+ 0.62*mcfPv , p=0.0004)が、一部の拡張機能障害型心不全や不整脈を合併する症例において評価ができない、あるいは実測と大きくかけ離れたmcfPvを示した。適切にmcfPvが評価できた症例では生理食塩水による容量負荷(10ml/kg)によってmcfPv上昇を確認した。結論:mcfPvの測定は拡張機能障害を持つ生体において正確性を欠くが、適切なデータ採取ができれば信頼性は高い。本検討に基づいて適切なデータ採取を行うことにより、呼吸管理中の循環評価や薬効評価が可能となり、重症疾患における水分管理が容易となることが期待される。