[II-OR22-05] Impact of FBN1 gene mutation types on the progression of aortic disease in patients with Marfan syndrome
Keywords:マルファン症候群, 遺伝子, 大動脈解離
【背景】マルファン症候群(MFS)の責任遺伝子であるFBN1の変異は、ミスセンス変異を中心とする強制阻害(DN)型とナンセンス変異を中心とするハプロ不全(HI)型の二つに分類され、近年HI型変異が大動脈合併症のハイリスクであることが報告された。遺伝子産物の量的異常を来たすHI型変異は変異の位置に影響されにくいとされる一方で、エクソン24-32など重症な表現型に関連する領域も存在し、MFSにおいてFBN1遺伝子変異と大動脈病変の重症度の関係は未解明な部分が多い。【方法】診療録を後方視的に調査し、2006年から2017年に当院で診療を行ったFBN1変異を有するMFSの患者において、遺伝子型と大動脈イベント(死亡、A型大動脈解離または大動脈基部置換術)の関係についてKaplan Meier解析を行った。遺伝子変異は変異の位置と予測されるアミノ酸変化からDN・HI型に分類した。【結果】患者は248例(内女性120例)で最終診察年齢の中央値は31歳(内20歳未満75例)、97例に大動脈イベントを認めた。20歳未満に大動脈イベントを認めた12例のうちDN型は7例だった。7例のDN型変異の内6例はシステイン残基に影響を与える変異でこれらはエクソン 25-36, 43-49のCa結合EGF様ドメインに局在しており、これをDN-CD型変異、これ以外のDN型変異をDNnonCDと命名した。20歳以上の患者においてもDNCDはDNnonCDに比べて大動脈イベントのリスクが有意に高かった(P<0.001)。患者全体において、DNCD/HI/DNnonCD型の患者(n=28/93/127)のイベント回避年齢の中央値はそれぞれ30/33/52歳で、DNCDと比較した大動脈イベントのハザード比は、HI型で0.51 (P=0.03)、DNnonCD型で0.19 (P<0.001)であった。【結論】MFSにおいて大動脈イベントリスクが比較的低いとされるDN型変異の中に、HI型変異よりさらにリスクの高い一群が同定された。FBN1変異をHI/DNCD/DNnonCDと分類すると、簡便な予後予測・リスク層別化が可能であると考えられた。