[II-OR25-03] 房室弁逆流を合併した無脾症候群に対するInter Annular Bridgingの効果
キーワード:無脾症, Inter Annular Bridging, 房室弁逆流
【目的】当院では従来の形成法だけでは対応の難しい単心室房室弁逆流症例に対し,inter annular bridging(IAB)を導入し無脾症およびHLHS症例を中心に行ってきた。無脾症例でのIABの効果を検討することを目的とした。【対象】2011年1月~2017年12月に,初回から当院で手術介入を行った無脾症候群31例中,IABによる房室弁形成を行った10例を対象とした。IABによる房室弁形成のタイミングは,初回姑息術時6例,BDG時2例,BDG-TCPC interstage期1例,TCPC時1例で,日齢は2-759(中央値40)日(うちし2m未満6例),体重は2.4-9.0(中央値3.5)kgであった。房室弁に対する併施手技として,commissural annuloplasty:5,edge to edge:3,cleft closure:1,cordal resection:1,自己心膜延長:1を行った。【方法】弁逆流の程度はtrivial:0,mild:1,moderate:2,severe:3とした。逆流ポイントの評価としてVC(mm),房室弁の心室への陥入の指標としてtethering hight:TH(mm)を測定した。IABの前後での各指標の変化を評価した。【結果】弁逆流の程度は術前2.4±0.8から術後1.1±0.6まで軽快(p=0.0037),VCは4.4±1.7から2.5±1.2まで減少(p=0.0092),THは3.8±2.1から2.7±1.9まで減少した(p=0.0106)。手術死亡なく,遠隔期死亡は4例で,うち3例は新生児期に房室弁介入を要した症例であった。観察期間2.1±1.9年で,再介入を3例,再々介入を2例に行い,直近の弁逆流は1が4例,2が2例であった。対象期間中の全31例中,2m未満に房室弁介入を要した症例は7例で,2m以降介入7例,房室弁介入不要17例と比べ術前のTHが有意に大きかった(順に4.9±1.7,3.3±0.8,0.9±0.7)。【結語】新生児乳児期早期に房室弁への介入を要する症例では,tetheringの程度が強いことが示唆された。IABはこのような児にも応用できる単心室房室弁形成の手段で,術後THが減少し弁逆流の制御に寄与する。ただし新生児乳児期早期から高度房室弁逆流を持つ症例の生命予後の改善には引き続き努力を要する。