[II-OR27-04] 完全大血管転位に対する大血管スイッチ術後の遠隔期冠動脈病変の検討
キーワード:TGA, ASO, Coronary complication
【背景】完全大血管転位(transposition of the great artery: d-TGA)に対する大血管スイッチ術(arterial switch operation: ASO)後早期の冠動脈合併症は冠動脈形態・走行、手術手技によるものが多いが、遠隔期における狭窄の機序は不明な点が多い。【目的】遠隔期冠動脈狭窄の発生頻度、狭窄部位、機序について検討する。【対象と方法】当院のASO後症例で、術後評価の心臓カテーテル検査を施行した30例(男25例、女5例、術後2.3~23.0年:中央値 11.0年)。そのうち、選択的冠動脈造影で有意な冠動脈狭窄を認めた症例について後方視的に検討した。【結果】冠動脈狭窄は6例(20%)に認めた(1例:完全閉塞、1例:重度狭窄、2例:中等度狭窄、2例:軽度狭窄)。冠動脈走行パターンは、Shaher1型4例、2b型1例、4型1例。Shaher1型以外の狭窄はもともとの走行形態による軽度狭窄であった。中等度以上の狭窄をきたした症例は全例Shaher1型で、左冠動脈主幹部(LMT)病変であった。しかし全例、自覚症状は認めず、負荷心筋シンチ(MPI)で虚血所見は完全閉塞例と重度狭窄2例のみに認めた。重度狭窄例ではカテ中に冠血流予備量比FFRを測定し、有意狭窄所見を認め、治療適応と判断してBentall手術を施行した。術中所見は、拡大したValsalva 洞の前方に位置したLMTが肺動脈に挟まれた状態であった。【考察】大動脈基部拡大に伴い走行の変化を生じ、肺動脈が前方にある左冠動脈脈を圧排することで狭窄をきたす可能性がある。【結語】術後早期に冠動脈狭窄がなくとも、遠隔期に臨床症状なく突然死するリスクがあり、全例で積極的なフォローが必要である。