[II-OR29-01] 心室域による拡張能の差がFontan術後単心室における機械的非同期の病態形成に重要である - シミュレーションによる考察
Keywords:単心室, 機械的非同期, Fontan
【背景】成人二腔心に対する心室再同期療法において左室単独ペーシングは両心室ペーシングと同等の治療効果であると報告される一方、右室ペーシング(左脚ブロック)の予後は悪い。すなわち病的な心室機械的非同期には、非同期の時間差だけでなく心室の収縮パターンも重要であると予想される。他方、様々な心室形態を持つ単心室における病的な機械的非同期の運動パターンは不明である。
【方法】心室に時変エラスタンスモデル、血管系に3要素Windkesselモデルを採用した、単心室Fontan術後循環を作成し血行動態シミュレーションを行った。十分大きな心室中隔欠損(VSD)で連結した心室1・2を持つ2コンパートメントモデルにおいて、拡張末期容積比α (EDV1/EDV2)、収縮性比β (Emax1/Emax2)を一意に設定した体心室を仮想した。心室1に対し心室2の収縮開始がTdys (ms)遅れるコンパートメント間の非同期を作成し、血行動態をシミュレーションした。
【結果】両心室の運動に遅れがないとき(Tdys = 0)、α×β≒1のとき、両心内圧は釣り合い生理的同期単心室運動が再現された。α>1 (かつβ<1)の心室においては、Tdysの増加に伴い、+dP/dtは低下するも心拍出量低下は軽度であった。しかしα<1 (かつβ>1)の心室においては、Tdysの増加に伴い+dP/dtは比較的維持されるものの、収縮中期に心室1から2へのVSD逆行血流が増多し、心拍出量も急速に低下した。また頻拍に伴う心拍出量増多が相対的に少なかった。なお、どのモデルにおいても非同期に伴う中心静脈圧上昇はごくわずかであった。
【結語】相対的に低拡張能である小さな心室域から収縮が先行する心筋収縮パターンは、等容収縮期に相対的に高拡張能である大きな心室域へ血液が移動しやすい分、収縮中期にVSDを通じた逆行血流が増多し低心拍出の原因となる。結果、収縮先行域に”flash motion”を呈し、これは非同期の開大や頻拍に対して脆弱な運動パターンであると予想される。
【方法】心室に時変エラスタンスモデル、血管系に3要素Windkesselモデルを採用した、単心室Fontan術後循環を作成し血行動態シミュレーションを行った。十分大きな心室中隔欠損(VSD)で連結した心室1・2を持つ2コンパートメントモデルにおいて、拡張末期容積比α (EDV1/EDV2)、収縮性比β (Emax1/Emax2)を一意に設定した体心室を仮想した。心室1に対し心室2の収縮開始がTdys (ms)遅れるコンパートメント間の非同期を作成し、血行動態をシミュレーションした。
【結果】両心室の運動に遅れがないとき(Tdys = 0)、α×β≒1のとき、両心内圧は釣り合い生理的同期単心室運動が再現された。α>1 (かつβ<1)の心室においては、Tdysの増加に伴い、+dP/dtは低下するも心拍出量低下は軽度であった。しかしα<1 (かつβ>1)の心室においては、Tdysの増加に伴い+dP/dtは比較的維持されるものの、収縮中期に心室1から2へのVSD逆行血流が増多し、心拍出量も急速に低下した。また頻拍に伴う心拍出量増多が相対的に少なかった。なお、どのモデルにおいても非同期に伴う中心静脈圧上昇はごくわずかであった。
【結語】相対的に低拡張能である小さな心室域から収縮が先行する心筋収縮パターンは、等容収縮期に相対的に高拡張能である大きな心室域へ血液が移動しやすい分、収縮中期にVSDを通じた逆行血流が増多し低心拍出の原因となる。結果、収縮先行域に”flash motion”を呈し、これは非同期の開大や頻拍に対して脆弱な運動パターンであると予想される。